製造業経営コンサルタントの井上です。

私のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

四半期ごとに発表されてますが、事業環境などが更新された都度、変化点や質疑応答に含まれる事業環境や動向、気になる点をまとめていきます。

特に、

  • 事業環境及び環境の変化
  • 事業戦略の方向性
  • 製造拠点の動向(日本での今後の生産をどう考えているのか?)

この3点について見ていきます。

まずは、半導体製造装置メーカーのレーザーテック(株)からいきます。

事業環境の変化

レーザーテック(㈱)の2021年6月期の期末と2022年6月期第二四半期の株主説明資料での事業環境変化での変化点について見ていきます。

(レーザーテック㈱ IR資料より)
(レーザーテック㈱ IR資料に筆者加筆)

2022年6月期の第2四半期で変化のあった事業環境の変化について特に気になる点は、①、④で。半導体不足ということが先端からレガシーまでということ。最先端ではないので、最先端はガッツリ投資されており使用される機器も限定されるので、不足はないと見て良い感じですね。

デジタル化の進展が巣ごもり需要など高まり、リモートも含め、定着してきているのであらゆる機器の半導体が不足していると考えられます。後は、マレーシアなどの洪水等の影響も大きと考えられます。

⑤のDRAMでもEUVLの量産適用が開始されたということで、DRAMプロセスも最先端プロセスに入ってきているものがあるということです。

追加項目として、⑥の人材不足ですね。これは致し方がない。。。。

質疑応答より市場環境・動向と気になる点について

決算報告の後の質疑応答に色々事業環境の変化や事業戦略についてより重要なことがあります。質疑応答の中で重要と思われることをピックアップしました。(自分の覚書として)

内容的に、ざっくり言うとペリクリ有り無しが混在するが、受注状況においては今後もより活況になっていくという感じですね。

レーザーテックに関しては、より最先端の設備投資状況が反映されるので、最先端の動向をしれる良いソースになります。

  • ペリクルの状況、受注を見ますと引き続きMATRICSX8ULTRAの受注が強いことから、ペリクルが装着されないマスクも多数使われ続けると見ている。
  • ペリクルが使われるマスクとペリクルが使われないマスクの両方が使われ続けるものと見込んでいる。
  • 来年の受注の方向感、2nmの量産開始が3nmよりも2年後と言われているので、そちらのまず開発向け、実際に量産向けの注文がいつ入るのかちょっと分からないですが、来年から再来年にかけてはこの2nmの検査装置の需要も出てくるものだと予想しております。
  • 新たな先端半導体の量産を行っている会社さんの新しい拠点の受注が具体化してわれわれのところに届くのが来年か再来年とか、そのぐらいのタイムフレームで入ってくるのではないかと期待しております。その上うな二つの大きなドライビングフォースがあると思っております。
  • 実際に上期の受注でMATRICSの受注も多数いただいております。こちらはただ、3nmとそれ以外も入っています。 3nmに限定する話ではないんですが、引き続きわれわれとしては3nmになってもペリクルがないマスクも使われ続けると見込んでおります。ただ何枚中何枚というのはわれわれ自身も情報を掴んでおりませんレ今お答えはできません。
  • マスクを作る部門での検査装置とウェハファブ、すなわち実際にデバイスを忤るラインでのマスク検査装置の需要と二つの市場があるんですが、現状のところマスクショップでの需要のほうが強いです。
  • 位相シフトマスクとかあるいは今ペリクルも高透過率のものがかなり開発で進んできていると思うんですけれども、これらの製品が実用化されてくれば、ペリクルが使われる可能性、およびペリクルなしでも位相シートマスクとかが使われるようになると、ACTISの事業機会が広がることが期待されると考えていいですか。
  • 先ほどおっしゃられたように位相欠陥を検出する重要性が増してくる、あるいはもっと高解像度の欠陥検査装置が必要になってくると、そういう状況になると、よりACTISが必要になってくるのではないかと期待しております。

  • 前年度のわれわれの売上をお話させていただきますと、全当社の売上に占める割合でTSMC社が25.1%、Samsung社20.0%、lntel社が14.7%でした。

受注状況

(レーザーテック㈱ IR資料より)
(レーザーテック㈱ IR資料より)

研究開発動向

(レーザーテック㈱ IR資料より)

研究開発の活動にも変化があれば見ていきたいですが、今回は大きく変化なしということです。

まとめ

まとめ
半導体最先端の設備投資は今後の順調に進みそうである。また2〜3年後より大きな投資が考えられそうであり、半導体の進化は止まりそうもない。

IRから漏れ伝わるシリーズ

IRから漏れ伝わる事業環境分析|半導体製造装置メーカー:レーザーテック(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|EUV向け半導体マスクブランクス:HOYA(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|工作機械メーカー:DMG森精機(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|産業用ロボットメーカー:(株)安川電機
IRから漏れ伝わる事業環境分析【開示レベルC】|ファナック(株):産業用ロボット・工作機械・放電加工機・射出成形機メーカー
IRから漏れ伝わる事業環境分析【参考レベルC】|(株)ヒラノテクシード:塗工機・化工機メーカー(ロールtoロール)

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 注目企業の事業分析
業界企業名事業内容第1四半期第2四半期第3四半期期末
 半導体製造装置

 レーザーテック(株)半導体マスク欠陥検査装置等製造9月12月3月6月
 ローツェ(株)ウエハ搬送システム、FPD製造装置等5月8月11月2月
 工作機械・産業用ロボット ファナック(株) CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 6月 9月 12月3月