デジタル化時代の中小製造業の
人材育成・教育シリーズ
第6回目 難易度の高い業務ほどOJTという名の人任せでなくポイントや教育方法を「研究」すべき
製造業経営コンサルタントの井上です。
今回から「デジタル化時代の中小製造業の人材育成・教育シリーズ」として、現状、OJTという名の何もしない人材育成・教育について提言を込めて、実際に成長している100名以下のものづくり企業で実施している人材育成・教育について述べていきます。
そのスケジュールとしては以下の通りです。
(シリーズのスケジュール)
< 目 次 > 第1回目:デジタル化時代の「ものづくりは人づくり」とは? 第2回目:今後の中小製造業の仕事は誰がやるのか? ◆「機械・ロボット」にさせる仕事 ◆「システム・AI」にさせる仕事 ◆「人間」がするべき仕事 ・誰でも出来る化 ・高度な専門職(職人) ・管理職 第3回目:中小製造業の人材育成・教育の実態 ◆大手に比べて人材の質も比較すると低く、教育の仕組み化も弱くのに教育していない現実 ◆OJTという名の丸投げ無責任体質で「教育品質」のバラツキが大きい ◆ISOでの形だけの教育計画 第4回目:「御社の社員の一人前基準・目安」は何ですか? ◆何が求められるスキルなのかを明確にする➜目次化 ◆職種別の一人前基準を明確にする ◆「一人前基準」は自発的に伸びる社員の道標になる ◆部品加工業におけるスキルマップの事例 第5回目:人材育成・教育は、コンテンツ化が重要。コンテンツ化して「資産化」しろ! ◆「目次」が出来たら、項目ごとに「コンテンツ化」しろ ◆デジタル化した「教育のコンテンツ化」はアップデート可能な「資産」 ◆「コンテンツ化」の手段としての「動画」活用 ◆「教育コンテンツ」+「教え方」もZoomのレコーディングを活用してデジタル化する ◆コンテンツのアップデートも考慮した「教育体系」がデジタル化時代には必要 第6回目:難易度の高い業務ほどOJTという名の人任せでなく教育方法を「研究」する ◆教育する事が良い事であると勘違いしている ◆難易度が低い業務ほどマニュアル化(明確化)されているが、なぜか難しい業務ほど人任せの現実 ◆習得に時間がかかる(難易度の高い)業務ほど、ノウハウの現場の職人依存の現状 第7回目:教育することも工数がかかる。教育工数を削減も ◆「コンテンツ化」すれば、教育する工数を減らせる(人が教えなくて良い状態」を作る) ◆教育の「コンテンツ化」=「教育する工数削減」=「技術伝承がしやすい環境」 第8回目:製造業の評価制度はスキルが明確でなくければ上辺だけに評価制度になる。(人材育成と評価制度の関連性)
教育する事が良い事であると勘違いしている
前回はの「人材育成・教育は、コンテンツ化が重要。コンテンツ化して「資産化」しろ!」では、
◆「目次」が出来たら、項目ごとに「コンテンツ化」しろ
◆デジタル化した「教育のコンテンツ化」はアップデート可能な「資産」
◆「コンテンツ化」の手段としての「動画」活用
◆「教育コンテンツ」+「教え方」もZoomのレコーディングを活用してデジタル化する
◆コンテンツのアップデートも考慮した「教育体系」がデジタル化時代には必要
として「教育コンテンツ」をデジタル化することが第一に重要で、デジタル化した「教育コンテンツ」をアップデートする為に「教育計画」や「評価制度」に組み込むことが重要であることをお伝えしました。
今回、第6回目は、現場を見ていてずっと不思議に思っていたことである「難易度の高い業務ほど人任せでなくポイントや教育方法を「研究」すべき」についてお伝えしていきます。
通常、会社でOJTなり集合教育なり教育は良いことだという考えが当たり前になっています。
新入社員教育は毎年毎年、同じことを教えます。ただ新入社員教育は社会人としての心構えやマナーを覚えるということもありますが、会社と新入社員とのコミュニケーションとしての機能もあります。単純にスキルを学ぶということではありません。
この様な場合は、物事を教えるという以外に重要な意味を持っています。
他に業務を覚える、スキルを身につけるという点において、知識ベースの部分と経験を積み重ねる経験型スキルが考えられます。特に知識ベースの部分においては、前回申し上げたコンテンツ化して品質レベルを一定にして、繰り返しいつでもどこでも見ることができるので、教えられる人の為になります。
教育の内容も意味をそれぞれですが、ただ何もなく、教える人もやらされているからやる、教育計画にあるから教えるなど、やらされ教育では教えられる人の時間や教える人の時間もムダになります。
スキル中身や基準が不明確、教え方も人それぞれでは、重要な人財に対して、教える事、教育自体がムダの塊(カタマリ)になってしまうことを考えてみてください。
難易度が低い業務ほどマニュアル化(明確化)されているが、なぜか難しい業務ほど人任せの現実
中小製造業(部品加工業)の事業所数は減少しています。また30名以上の事業所は出荷額も増えているが、29名以下の事業所は出荷額・付加価値額も横ばいです。更に、一人当たりの出荷額は約3倍や付加価値額は1.6倍違い、生産性の違いが顕著です。
企業は規模だけで測れませんが、社員一人当たり生産性や収益性は比較には意味はあります。29名以下の製造業でも一人当たりの生産性、収益性が高い企業もクライアントに多くいます。
その様な企業は、機械にやらせる仕事を明確にして”機械に稼がせる”ことを非常に気にしてます。更に、システムでできることにも常に気を配ってシステム化してます。パートさんがやる仕事、新人から数年の社員がやる仕事、スペシャリストがやる仕事など分けつつ、人間でやる仕事は、標準化・手順書化を業務フローを明確にして進めてます。
ただ多くの中小製造業で難易度の高い仕事は、その仕事自体できる人が少なく、ある程度年齢が高いベテラン社員に任せるケースが多いです。ただ、ベテラン社員はもともと自分自身も見て覚えて習得してきた経験しかないので、実体験に基づいてでしか部下指導ができない現実があります。また教えようと努力しても、伝える力が弱くドキュメントにまとめたり写真を使ったりなど、マニュアルにまとめることもままならないのが現実です。
その為、経営者自身もわからない事も多く、ベテラン任せ、現場任せになってしまっている現実があります。
習得に時間がかかる(難易度の高い)業務ほど、ノウハウの現場の職人依存の現状
それぞれの会社の人財に対する考え方が重要になります。先程の機械・ロボットでできる仕事やシステム化・RPA化できる仕事を人間から切り離し、更に1年以内に習得できる仕事は標準化・手順書化を進めれば良いと思います。
今後は、難易度が高いく習得に時間がかかる業務においては、
●仕事をさせながら、教育する
↓
●教育しながら、仕事もさせる
と言う感じに考え方を変える必要があります。
私のクライアントの切削加工業(従業員90名)では、半年〜1年程度はベテラン社員が付きっきりで指導・教育をメインにしています。その間で合格すれば、その段階で部署異動になります。
更に考え方を変えたいこととして、
●習得に8〜10年かかるから大変なんです
↓
●習得に8〜10年かかるなら、5年以内でできれば3年以内に一人前にできないかチャレンジする
この考え方が重要になります。
10年かかることを、何十年も会社をやっているのにそのままでいいという考え方が間違っています。確かに、特定に仕事が数年に一度しか来なくて特定スキルが上達しないというケースはあります。このケースが仕方がないですが、全体の何%あるのか考えてみましょう。できる部分は多くあるはずです。
先程の機械・ロボットやシステムでできる事がテクノロジーの進化によって、その範囲を今後も広げていくことになるででしょう。機械化・システム化は資本力によって差がつく部分です。そうなると中小製造業は不利になります。更に、機械化、システム化を誰でも購入できる機械やシステムを使っていくとどこの製造業でも、お金があれば同じことができるということになります。要は競争力が無くなるということです。今回は詳しく書きませんが、機械化やシステム化をするにも、自社の独自ノウハウ(やり方)を織り交ぜたモノにできれば非常に良い差別化要因になります。
これは人間が行う業務も同じことです。特に難易度の高い業務はマニュアル化しづらいので、教育方法の研究をより進めて動画などあらゆることを駆使して習得しやすい環境や仕組みを常に考えていくことが、最終的に会社の競争力維持に重要な要素になります。
まとめ
第6回目の「難易度の高い業務ほどOJTという名の人任せでなくポイントや教育方法を「研究」すべき」では、
●難易度が低い業務ほどマニュアル化(明確化)されているが、なぜか難しい業務ほど人任せの現実
●習得に時間がかかる(難易度の高い)業務ほど、ノウハウの現場の職人依存の現状
について述べてきました。
更に、機械化、システム化を誰でも購入できる資本力で決まります。ただ、お金があれば同じことができる、即ち差を付けづらくなります。差別化できる事としては、人間が行う難易度の高い業務しかないのですが、マニュアル化しづらいので、教育方法の研究に力を入れている会社が少ないです。
ぜひ考え方だけは、
●仕事をさせながら、教育する
↓
●教育しながら、仕事もさせる
●習得に8〜10年かかるから大変なんです
↓
●習得に8~10年かかるなら、5年以内でできれば3年以内に一人前にできないかチャレンジする
ここまでいかなくても、少しで会社が強くなる為の考え方を変えて、具体的な行動を起こして下さい。
実際に私のクライアントでは既に実施しており、その成果も多く出て来ています。ぜひ、御社にも取り入れて、強い会社を作るように頑張ってみて下さい。