製造業経営コンサルタントの井上です。

私のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

四半期ごとに発表されてますが、事業環境などが更新された都度、変化点や質疑応答に含まれる事業環境や動向、気になる点をまとめていきます。また、統合報告書や中期計画など、四半期ごとの更新でないIRの資料も合わせて、変化点を見ていきます。

特に、

  • 事業環境及び環境の変化
  • 事業戦略の方向性
  • 製造拠点の動向(日本での今後の生産をどう考えているのか?)

この3点について見ていきます。

今回は、日本電産(株):モーターメーカー(車載用、精密小型、産業用等)になります。

まず今回、日本電産(株)の各種IR資料の見させてもらいましたが、非常にわかりやすく明確に現在・未来を記載されております。また、経営において自力と他力を明確に分けて表示している潔さも関心しました。

(日本電産㈱のIRの資料に筆者加筆)

よく日本電産(株)のことをM&Aで成長と言う方が多いのですが、その一面もありますが、日本電産(株)としては、自律成長とその他(M&A)を明確に分けて表示しています。自社の努力で成長させるという意志が他社のIRのを見ていても格段に上だということを感じます。

まずは、この点が他の企業との大きな違いであり重要なことなので、初めにお伝えしておきます。

市況データ : 鉱工業生産指数 モータ・電動機等

まずは、モーター・電動機等の市況データを見ていきましょう。鉱工業生産指数です。これはあくまでも国内生産の指標です。特に、サーボモータが鰻登りになっています。過去の2017年の活況状態を突き抜けていきそうな勢いです。

(筆者作成)

2021年度 第3四半期累計 連結決算業績

まずは、現状認識としての連結決算業績です。売上高から各利益が20%前後の伸びとなっています。

(日本電産㈱のIR資料より)

中期計画2025年のVision

(日本電産㈱のIR資料より)

製品グループ別事業環境 (統合報告書、決算説明資料と決算短信)

日本電産(株)では、統合報告書と決算短信をあわせて見たほうが、事業環境を把握しやすいので合わせて掲載してみます。

統合報告書では、日本電産(株)は2020年度の振り返りがあるので、今期は2021年度のみを掲載してきます。気になった部分に関しては、赤線を足しているので、特にそこを参照して漏れ伝わることを自社に経営に活かしてください。

決算短信からは四半期比較として、直近四半期とその前期の四半期での変化点を見ていく。また赤線は直近の四半期での変化点であり、青線は前期の四半期から削除されて項目になります。

精密小型モータ 製品グループ

統合報告書 成長戦略:精密小型モータ

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

決算短信比較 :「精密小型モータ」製品グループ

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)
(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

車載モータ等 製品グループ

統合報告書 成長戦略 : 車載モータ

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

決算説明資料 2021年度第3四半期 <車載>:中国市場におけるBEV販売台数推移

(日本電産㈱のIR資料より)

決算説明資料 2021年度第2四半期 <車載> EV用トラクションモータの事業環境①

(日本電産㈱のIR資料より)

2021年度第2四半期 <車載> EV用トラクションモータの事業環境②

(日本電産㈱のIR資料より)

決算説明資料 2021年度第2四半期 <車載> EV用トラクションモータの事業環境③

(日本電産㈱のIR資料より)

決算説明資料 2021年度第3四半期 <車載>:E-Axle、採用車種の実例

(日本電産㈱のIR資料より)

決算説明資料 2021年度第3四半期 <車載>:EV駆動モータ事業ビジョン

(日本電産㈱のIR資料より)
EV関連の見通し
EV駆動モータ事業のビジョンや事業環境の見通しからわかる重要なポイントは、EVが2025年から大幅に拡大していくポイントであり、2030年以降はEMSの台頭も視野にいれていくべきであるという点を感じ取れます。
これは私的に想定通りでありますが、日本の製造業の取り分け自動車産業の動きを見ていくと大きなズレを感じます。

決算説明資料 生産体制

2021年度 第2四半期

(日本電産㈱のIR資料より)

2021年度 第3四半期

(日本電産㈱のIR資料より)
生産体制について
今後の生産体制について、この「IRから漏れ伝わるシリーズ」では国内製造にどう大手メーカーが寄与するか、国内生産はどうなるのか、今後の業界別の動きはという点を見ています。
そのような中で、日本電産(株)もそうですが、日本での生産に今後、大きく寄与する動きはほとんど見られないということが言えます。

決算短信比較 : 「車載」製品グループ

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)
(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)
チェックポイント
「EVのファブレス生産加速」という点、EVは内燃機関に比べて生産体制の変化が大きい。その事が関係ある企業は肝に命じておくべき点です。

家電・商業・産業用モータ 製品グループ

成長産業 : 家電・商業・産業用モータ

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

「家電・商業・産業用」製品グループ 決算短信比較

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)
(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

その他モータ(機器装置、電子・光学部品など) 製品グループ

統合報告書 成長戦略 : その他モータ(機器装置、電子・光学部品など)

(日本電産㈱のIR資料に筆者加筆)

決算短信比較 :「電子・光学部品」「その他」製品グループ

(日本電産㈱のIR資料より)
(日本電産㈱のIR資料より)

質疑応答

※音声データしかないので、この点は後日掲載予定

まとめ

まとめ
総じて、IR資料から本質的な部分を垣間見れる部分が非常に多い。
【参考レベルA】
残念の部分は質疑応答が音声データである点です。これは時間が許せば重要な点があれば、今後、掲載していきます。
内容的には、特に自動車産業として今後の動向が垣間見れる企業です。日々情報収集している方では、確認ができます。

IRから漏れ伝わるシリーズ

IRから漏れ伝わる事業環境分析|半導体製造装置メーカー:レーザーテック(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|EUV向け半導体マスクブランクス:HOYA(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|工作機械メーカー:DMG森精機(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|産業用ロボットメーカー:(株)安川電機
IRから漏れ伝わる事業環境分析【開示レベルC】|ファナック(株):産業用ロボット・工作機械・放電加工機・射出成形機メーカー
IRから漏れ伝わる事業環境分析【参考レベルC】|(株)ヒラノテクシード:塗工機・化工機メーカー(ロールtoロール)

※なお、本ブログは、本ブログ作成者が細心の注意を払い判断した出所からの情報に基づき作成されています。ただし、本ブログの記載内容が真実かつ正確であり、重要な事項の記載が欠けていないことを保証するものではありません。

 注目企業の事業分析
業界企業名事業内容第1四半期第2四半期第3四半期期末
 半導体製造装置

 レーザーテック(株)半導体マスク欠陥検査装置等製造9月12月3月6月
 ローツェ(株)ウエハ搬送システム、FPD製造装置等5月8月11月2月
 工作機械・産業用ロボット ファナック(株) CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 6月 9月 12月3月