デジタル化時代の中小製造業の
人材育成・教育シリーズ
第4回目 「御社の社員の一人前基準・目安」は何ですか?
製造業経営コンサルタントの井上です。
今回から「デジタル化時代の中小製造業の人材育成・教育シリーズ」として、現状、OJTという名の何もしない人材育成・教育について提言を込めて、実際に成長している100名以下のものづくり企業で実施している人材育成・教育について述べていきます。
そのスケジュールとしては以下の通りです。
シリーズのスケジュール
< 目 次 > 第1回目:デジタル化時代の「ものづくりは人づくり」とは? 第2回目:今後の中小製造業の仕事は誰がやるのか? ◆「機械・ロボット」にさせる仕事 ◆「システム・AI」にさせる仕事 ◆「人間」がするべき仕事 ・誰でも出来る化 ・高度な専門職(職人) ・管理職 第3回目:中小製造業の人材育成・教育の実態 ◆大手に比べて人材の質も比較すると低く、教育の仕組み化も弱くのに教育していない現実 ◆OJTという名の丸投げ無責任体質で「教育品質」のバラツキが大きい ◆ISOでの形だけの教育計画 第4回目:「御社の社員の一人前基準・目安」は何ですか? ◆何が求められるスキルなのかを明確にする➜目次化 ◆職種別の一人前基準を明確にする ◆「一人前基準」は自発的に伸びる社員の道標になる ◆部品加工業におけるスキルマップの事例 第5回目:人材育成・教育は、コンテンツ化が重要。コンテンツ化して「資産化」しろ! ◆「目次」が出来たら、項目ごとに「コンテンツ化」しろ ◆デジタル化した「教育のコンテンツ化」はアップデート可能な「資産」 ◆「コンテンツ化」の手段としての「動画」活用 ◆「教育コンテンツ」+「教え方」もZoomのレコーディングを活用してデジタル化する ◆コンテンツのアップデートも考慮した「教育体系」がデジタル化時代には必要 第6回目:難易度の高い業務ほどOJTという名の人任せでなく教育方法を「研究」する ◆教育する事が良い事であると勘違いしている ◆難易度が低い業務ほどマニュアル化(明確化)されているが、なぜか難しい業務ほど人任せの現実 ◆習得に時間がかかる(難易度の高い)業務ほど、ノウハウの現場の職人依存の現状 第7回目:教育することも工数がかかる。教育工数を削減も ◆「コンテンツ化」すれば、教育する工数を減らせる(人が教えなくて良い状態」を作る) ◆教育の「コンテンツ化」=「教育する工数削減」=「技術伝承がしやすい環境」 第8回目:製造業の評価制度はスキルが明確でなくければ上辺だけに評価制度になる。(人材育成と評価制度の関連性)
前回の振り返り:今後の中小製造業の人材育成・教育の実態
前回第3回目は、中小製造業の人材育成・教育の実態について3点述べました。
1点目:大手に比べ教育が必要だが実施していない
中堅以上(100名以上)の企業はより教育の必要性を感じて、実施をしている。社員のレベルアップが進み会社が強くなって行きます。中小製造業は、多くの経営者が必要性は感じているが、やり方がわからない、または実務をする時間以外で教育する時間を取るのが勿体ない。どうせ辞めてしまうのだから。と思っている節がある。
従って中小企業は人材の質が上がらず、人も集まらないという悪循環に陥いることについてお伝えしました。
2点目:OJTという名の丸投げ無責任体質で「教育品質」がバラツキが大きい
多くの中小製造業ではOJTでやっているが、人に任せる場合は「教育品質」のバラツキが大きくなりいます。会社として、いつまでに何を学ぶべきかを仕組み化を経営者の判断で作り上げると決めないと進まないことです。
3点目:ISOでの形だけの教育計画
ISOのような良い仕組みがあってもその中身に魂を入れて実施しないと、意味がないということのついてお伝えしました。
「御社の社員の一人前基準・目安」は何ですか?
第4回目は「御社の社員の一人前基準・目安は何ですか?」です。
いつもクライアントでいうことの一つとして「御社の○○職の人の”一人前の基準・目安”は何ですか?」と聞いています。職種によっては難しい職種もあるかもしれませんが、ほとんどの職種では設定は可能です。そして出来る限り定量化することが必要になります。
前からずっーーーと思ってましたが、会社として成果を求めるくせにどのようのスキルなどが必要なのか、またどのように学ぶべきなのか明確にしていない中小製造業が多すぎ。一般に言われる「2:8の法則」で、2割の優秀の人材は自分で考える力があり何を求めらているか、またどのようにしたら良いか考えられます。ただ、世の中の全体の2割です。ということは、大企業に就職する人も中小企業に就職する人もすべて合わせての2割です。。。。
中小製造業には一体、世の中の「2:8の法則」の2割の人が就職するのでしょうか?と考えてしまいます。
これら現実を踏まえつつ、具体的に対策を考えなくていけません。(生きていくには!)
何が求められるスキルなのかを明確にする➜目次化
先程、
中小製造業には一体、世の中の「2:8の法則」の2割の人が就職するのでしょうか?と考えてしまいます。
と言いましたが、ゼロといったわけでは有りません。
どこの会社もなんだかんだと言って優秀な人は、少なからずいます。それを活かせているかどうかは、疑問がありますが、優秀な人は間違いなくいます。その優秀なメンバーをモデルケースにしつつ、職種別に必要なスキルなど箇条書きでまずは書き出す作業をすることをおすすめします。
ISOを取得している企業では、少なくとも教育計画を立案して毎月マネジメントレビューをやっているはずです。
ということは、毎月、人材育成や教育について認識しているということになります。
それなのに、今のままのスキルマップ(力量表)で良いのでしょうか?
もちろん大丈夫という会社があると思いますが、多分、多くの会社は”うちの会社は大丈夫か?”を考えた経営者・幹部の方がいるのではないでしょうか?
なぜ私は「職種別のスキルの明確化」を進めるのかというと、「スキルの明確化」する仕事は一度作れば「会社の資産」になり、後はブラッシュアップしてより良い「資産」になる仕事であるからです。「資産」になりつつ「会社の強みの源泉」になりうる可能性もあります。
更に「スキルの明確化」することによって後ほど述べる「一人前基準」を明確にできます。
更に更に当然ですが、人材育成スピードが上がりこともメリットとして上げられます。
以前申し上げていたことを再度確認しますが、
今後の「仕事」は、機械・ロボットの自動化(ハード的)か、システム・AIの自動化(ソフト的)に出来る限り任せた上で、最後に残る”人間”がすべき仕事が非常に重要性を増します。その中でも「高度な専門職(職人)」部分を因数分解して、できるだけ明確化(スキルマップ化)して、更にそれをどのように教育していくのかという「教育の方法の研究」が重要になってきます。
今まで一人前になる迄に、10年かかっていたのを5年にとか、3年かかっていのが1年以内に一人前にするなど、やり方しだいでは可能です。
人がより重要な時代になって、
(今まで)仕事をさせながら、ついでに教育をする
(これから)教育を重点にしつつ、経験も積ませる為に実務をさせる
人に対する考え方を変える必要があると感じてます。
この為には、まずは「どのようのスキルや知識・経験」をしなければ行けないのか”明確化”すること、「目次を作る」ことが重要なことです。(社員は社員で、自らどのような事が求められて、一人前になるためのどうするかは自ら考えることは社員としての責務ですよ。)
自社の「職種別の一人前基準」を明確にする
会社として職種別のスキルを明確にする必要性等を述べてきました。
次は「職種別の一人前基準」を明確にすることについてです。
社員に「頑張れ」と伝えているので、どの状態になったら「頑張ったこと」になるのかを伝えずに「頑張れ」というのは、言い方が厳しいかもしれませんが卑怯だと思います。営業などは業績の数字が出やすいので、明確にしやすいですが、製造業の現場でも、その「頑張れ」を明文化して明確化して、「スキルマップ(力量)」で示すことが重要です。
その「スキルマップ(力量)」に”時間軸”を当てはめて、1年以内、3年以内では、一人前(仮に5年で)ではどのスキル(力量)が必要のかを占めることが、「頑張る為の目標」になってきます。
今の成長性の鈍化した日本、更に人口減少のフェーズに入ったこの日本において、年功序列で年齢が上がるだけで給料が上がる時代は既に終わっています。今までは頑張っていたらある意味よかったが、今後は結果(状態)も求められます。
といいつつ、多くの会社ではその「結果(状態)」すら示せてない会社が多いのです。
一度作って良くなくても、何度でも作ることはできます。ただ上手く作れない会社が今後、機械・ロボットの自動化(ハード的)、システム・AIの自動化(ソフト的)しつつ”人間”がすべき仕事をフォーカスを当ててより強い企業が作れるとは思えません。
ビジネスにおける物事は、できるだけ言語化(明確化)が必須と考えます。
人間が集まった組織においては、認識を合わせることは容易ではありません。そこから誤解が生じ、感情的になると上手くいうことも上手くいかないことが多くなります。
それが人間だから、仕方がないことです。
だからスキルにおいても明確化(目次化)して、そこに時間軸を入れて、一人前に基準を作り上げて、社員の頑張る理由の一つを作ることを強くおすすめします。
(作ることも重要ですが、運用がより重要ともお伝えしておきます。)
「一人前基準」は自発的に伸びる社員の道標になる
社員のスキルの明確化して、時間軸を入れて何年でどの程度のスキルが必要なのかを明確にしたのが「一人前基準」です。これらを明確化、言語化できるたら、何が良いのか?
社員を評価できるなどのメリットもありますが、まずは自発的に動く社員がより動きやすく、かつ評価されやすくなる環境ができます。自発的に頑張る社員は、更に明確に「頑張り方」が明示されていれば、「頑張り方」を考慮しながら更に頑張ります。もし頑張り方が少しピントがずれていたら、幹部、経営者に進言もしてくれるかもしれません。まずは頑張っている社員を適正に評価すべきです。その「頑張り方」が明示できれば、やる気はあるがどう頑張ったら良いかイマイチわからないという社員が自走して頑張りだす可能性があります。
「考えろ」とは「頑張れ」ということを良くいいますが、「考える方向性」や「頑張る方向性」はまず示して、少し考え方や頑張り方を提示しても会社として”損”は無いはずで。
どんどん会社や経営者が考えていることを「明確化」「言語化」して、見えるようにすることで、自発的に動ける社員からその方向で”勝手”動いていきますので、道標はどんどん明確化してください。
部品加工業におけるスキルマップの事例
※ 現在まとめ中なので、また後日掲載予定
まとめ
現在は昔と比べて、社会を取り巻く環境が全く違います。
昔は、人口増のGDPも大きく成長、諸外国と比べて教育水準や産業の成熟度など、日本は先行して大きな優位性をもっていました。
しかし、現在は諸外国もインターネットで情報格差がなくなり、製造業においても産業機械は日本製も含め購入しやすくなり、どの国でも同じ環境でビジネスを行いやすくなりました。
その為、中国初め頑張れば報われるという環境が拡がっています。まだまだ格差は多いですがファクトフルネスではないですが、確実に世界全体の環境は改善されてきています。
諸外国はその為、頑張ることに関して猛烈に頑張っています。
昔の日本みたいに。
発展途上国だけでなく、アメリカなどもテスラはじめイノベーションを積極的に起こしています。
社員がどのように頑張るかというのは、個人の責任ではありますが、より頑張る為の環境を会社内でも作り、頑張ることがカッコいい社会を作らないいけないと感じています。
今回は会社内で頑張る人が報われる、またもっと頑張りたい人たちに会社の仕組みとして、スキル(力量)の明確化、更に会社の「一人前基準」を作りサポートして、会社内で頑張る文化を広げてほしいという願いもあります。