デジタル化時代の中小製造業の
人材育成・教育シリーズ
第3回目 中小製造業の人材育成・教育の実態
製造業経営コンサルタントの井上です。
今回から「デジタル化時代の中小製造業の人材育成・教育シリーズ」として、現状、OJTという名の何もしない人材育成・教育について提言を込めて、実際に成長している100名以下のものづくり企業で実施している人材育成・教育について述べていきます。
そのスケジュールとしては以下の通りです。
(シリーズのスケジュール)
< 目 次 > 第1回目:デジタル化時代の「ものづくりは人づくり」とは? 第2回目:今後の中小製造業の仕事は誰がやるのか? ◆「機械・ロボット」にさせる仕事 ◆「システム・AI」にさせる仕事 ◆「人間」がするべき仕事 ・誰でも出来る化 ・高度な専門職(職人) ・管理職 第3回目:中小製造業の人材育成・教育の実態 ◆大手に比べて人材の質も比較すると低く、教育の仕組み化も弱くのに教育していない現実 ◆OJTという名の丸投げ無責任体質で「教育品質」のバラツキが大きい ◆ISOでの形だけの教育計画 第4回目:「御社の社員の一人前基準・目安」は何ですか? ◆何が求められるスキルなのかを明確にする➜目次化 ◆職種別の一人前基準を明確にする ◆「一人前基準」は自発的に伸びる社員の道標になる ◆部品加工業におけるスキルマップの事例 第5回目:人材育成・教育は、コンテンツ化が重要。コンテンツ化して「資産化」しろ! ◆「目次」が出来たら、項目ごとに「コンテンツ化」しろ ◆デジタル化した「教育のコンテンツ化」はアップデート可能な「資産」 ◆「コンテンツ化」の手段としての「動画」活用 ◆「教育コンテンツ」+「教え方」もZoomのレコーディングを活用してデジタル化する ◆コンテンツのアップデートも考慮した「教育体系」がデジタル化時代には必要 第6回目:難易度の高い業務ほどOJTという名の人任せでなく教育方法を「研究」する ◆教育する事が良い事であると勘違いしている ◆難易度が低い業務ほどマニュアル化(明確化)されているが、なぜか難しい業務ほど人任せの現実 ◆習得に時間がかかる(難易度の高い)業務ほど、ノウハウの現場の職人依存の現状 第7回目:教育することも工数がかかる。教育工数を削減も ◆「コンテンツ化」すれば、教育する工数を減らせる(人が教えなくて良い状態」を作る) ◆教育の「コンテンツ化」=「教育する工数削減」=「技術伝承がしやすい環境」 第8回目:製造業の評価制度はスキルが明確でなくければ上辺だけに評価制度になる。(人材育成と評価制度の関連性)
前回の振り返り:今後の中小製造業の仕事は誰がやるの?
前回の第2回目は、今後の中小製造業の仕事は誰がやるのか?についてお伝えしてきました。
「仕組み化」を意識して、ハード的自動化、ソフト的自動化を「ツール」を使って、仕事をさせることが”今”重要になってます。
その先に、人間でしか出来ない仕事を炙り出していきます。
次に「誰でも出来る化」をする為に業務分析を行い、手順書やマニュアルに落とし込めないか徹底的に考えます。この際に、仕事のやり方も同時に見直します。
そして人間がやるべき仕事「高度の専門職(職人)」と「管理職」になります。「高度の専門職(職人)」に関しては、どのように教育するのかという「教育方法の研究」が重要なポイントになります。
人間でできるから人間がやればいいと考える前に、ハード的自動化とソフト的自動化に落とし込めないか考えてみようとお伝えしました。
中小製造業の人材育成・教育の実態
第3回目は、中小製造業の人材育成・教育の実態について述べていきたいと思います。
大手に比べ教育が必要だが実施していない
まずはじめにこの問題は、”卵が先かにわとりが先が問題”になるということを言っておきます。
ただどうすべきかというと、結論はどっちもやれ!と思っている派です。
具体的には、教育はやりたい、やる必要があるが、業務が優先で余裕がないという問題です。
本音ベースで見てみると、多くの経営者が必要性は感じているが、やり方がわからない、または実務をする時間以外で教育する時間を取るのが勿体ない。どうせ辞めてしまうのだから。と思っている節があると思います。
この考え方では、一生、中小企業どまりに多くはあると思います。中小企業でなく、小規模事業者、家業止まりになります。
そもそも経営者も勉強していないのは論外になります。
現実をより良い方向に向かわせるには、ある程度の知識・ノウハウが世間以上(平均)ないとビジネスで行っている事業が儲かるはずがありません。
より勉強や教育をすることで、いろいろな事を知ることで「足らざるを知る」状態になり、より勉強しようという善循環に入る人も少しはいます。
「チャンスは人々に平等にある」と言いますが、私もそう思います。ただチャンスを掴んで事業を大きくする事ができる人は、チャンスに気づくことが出来た人です。そもそもチャンスに気づく為に基礎的なことでも知らなかったばかりにチャンスを掴めない人が多くいるという現実がこの世の中では無いでしょうか?
更に、中堅以上(100名以上)の企業はより教育の必要性を感じて、実施を永続的にできる管理職はサポートする総務がしっかりしだすので、内容に差はあれど人材育成・教育は進んで行きます。
中堅以上の会社は人材育成・教育が進み、社員のレベルアップが進み会社が強くなって行きます。また新卒や転職を考えている人は、即戦力として働ける人はいいのですが、やや不安な人は社内に教育制度が整備しているところが望みます。前向きな人も中堅以上の企業に集まることになります。
従って中小企業は人材の質が上がらず、人も集まらないという悪循環に陥ります。
だから”卵が先かにわとりが先か”ではなくて、実務もこなしつつ人材育成・教育も計画的にやるしかないのです。
OJTという名の丸投げ無責任体質で「教育品質」がバラツキが大きい
次に、人材育成・教育の方法についてです。
多くの中小製造業ではOJTでやってます!
と胸を張って言ってくることがありますが、それって何を教育すべきか<教育すべき項目>、どの時間軸で教育していくのか<スケジュール>が全く決めないで現場任せ、人任せの丸投げ無責任体質です。
中には熱心に部下や後輩を教える人もいます。稀に。稀にですね。
要は、人に任せる場合は「教育品質」のバラツキが大きくなりいます。熱心にやってくれる社員も昇格してポジションが上がれば、現場で教えることもできないポジションになります。その優秀な人材が、会社として「教育品質」のバラツキを無くすための自分自身のやり方を会社として共通に実施して行こうとするのは、社員の立場では中々進まないことです。
理由は、本人も自分のノウハウという意識も少しは働くし、他部門への移動などになれば、前の部門のことは悪く言えば関係ないことになってしまいます。現実として、このような状態になることがほとんどではないでしょうか。
会社として、いつまでに何を学ぶべきかを仕組み化を経営者の判断で作り上げると決めないと進まないことです。
ISOでの形だけの教育計画
次に、これもよくあるケースですが、ISOの教育計画を決めてマネジメントレビューをしていると思いますが、その内容の無さにいつも落胆しています。
取り敢えず、教育する内容を決めて、適当に進捗を確認している。更に色々な事情を理由に、教育ができなかったなど。。。。。
ISOだからではないのですが、良い仕組みがあってもその中身に魂を入れて実施しないと、折角、ビジネスを行っている時間は必ず一定時間行うのであれば、より社員・事業が強くなるように実行すればいいのにと心な中で思っています。
知識やビジネスにもっと貪欲になる必要が今の日本人には必要なのではないでしょうか?
(大きな話になっちゃいました。。。。)
まとめ
少し厳しく言ってしまったのですが、本当にそう思ってます。
良く経営者に読んで良いと思った本は勧めるのですが、その場でアマゾンで購入される方が多いですが、幹部以下になるとほとんどの人がその場で購入することは、後で買って読む方が非常に少ないです。
常に勉強が求められる幹部以上の人自身が勉強しない会社は、会社自体の教育に力が入るはずがありません。
今回は、現場でよく見る現象を上げさせてもらいました。すべてを表しているわけではないですが、あるあると頷ける部分もあるのではないでしょうか。
社員自身も自らを高める為に、自己啓発で勉強をすべきであり責務と思ってますが、それにプラスして教育を会社としてより実施して行くことによって会社が強くなって結果、成長企業になる可能性があります。
次回以降は、人材育成や教育は人の依存して、教育品質がバラツキ、人がいなくなったらノウハウが無くなってしまうのを防止する為に「教育をコンテンツ化」して積み上がる「資産化」していこうという話をしていきます。