製造業経営コンサルタントの井上です。

私のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

四半期ごとに発表されてますが、事業環境などが更新された都度、変化点や質疑応答に含まれる事業環境や動向、気になる点をまとめていきます。

今回は、産業用ロボットやモーションコントロール機器メーカーの(株)安川電機になります。

産業用ロボット 市況データ

まずは産業用ロボット関係の市況データを見ていきましょう。機械受注高と鉱工業生産指数です。いずれにしても高い水準になっています。2021年12月は高い受注高になってきています。

機械受注高 産業用ロボット

鉱工業生産指数 − 産業用ロボット

業績推移

まずは業績推移ですが、第三四半期を終えて27.7%増と順調に推移。モーションコントロールの伸び率が35.1%とセグメント別でみても一番伸びています。

安川電機は、ロボットよりもモーションコントロールの方が売上が多いのですね。

(㈱ 安川電機 IRより)
(㈱ 安川電機 IRより)
(㈱ 安川電機 IRより)

取り組み (四半期比較)

(㈱ 安川電機 IRより)
(㈱ 安川電機 IRより)

設備投資状況

(㈱ 安川電機 IRより)
チェックポイント
業績が向上しているのですが、研究開発費は横ばいですね。比率でみると
2021年度見通し : 3.71%
2020年度実績  : 4.56%
少し比率で見ると減少しています。

決算短信より (四半期比較)

決算短信からは四半期比較として、直近四半期とその前期の四半期での変化点を見ていく。また赤線は直近の四半期での変化点であり、青線は前期の四半期から削除されて項目になります。

地域別の経営環境

(㈱ 安川電機 IRより)

経営成績 : モーションコントロール

(㈱ 安川電機 IRより)

経営成績 : ロボット

(㈱ 安川電機 IRより)

経営成績 : システムエンジニアリング

(㈱ 安川電機 IRより)

2021年度 第3四半期 決算電話説明会 質疑応答

決算電話説明会 質疑応答の中で今後の事業環境などの未来につながる質疑応答をピックアップした。また赤字をプラス要因、青文字をマイナス要因として表現している。

Q 中国の景況感鈍化が懸念されていたが、受注動向が強い印象だ。想定よりも良かったのは何か?

A 3Qの受注は想定以上に強い。10 月をボトムに 11 月、12 月と増加している。10 月は電力供給や不動産関連の問題もあり、中小企業の資金 繰りも悪化していたが、金融緩和や電力正常化により、受注が戻ってきた。

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Q 中国以外で受注が良かった地域はどこか?

A 日本が強かった。3Q は日本が中国の季節性での減少をカバーした。

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Q 受注の先行きのリスクをどのように見ているか?それとも右肩上がりになるか?

A グローバルに強いのは EV 関連とバッテリー関連の投資だ。中国だけではなくグローバルで投資が活気 づいている。中国では完成車メーカが EV に投資すると、部品メーカもそれに追従した投資をする。 同じ動きが欧米でもある。バッテリー関連は、欧米でバッテリーパックの溶接があるほか、中国でのバッテリーの生産にモーション・ ロボットが使われる。また、その用途の機械が日本から多く輸出されている。電極・セパレータなどの 素材関係の投資も韓国を中心にグローバルで起こっている。様々な地域で EV とバッテリーの投資が伸びており、これらにけん引されてグローバルの受注が伸長している。

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Q 生産の YDX が欧米に展開される予定は?

A 現在は日本と中国で適用しており、次のステップで欧米にも展開していく。

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Q 4Q 受注は3Q から増加か減少か?

A 中国の春節影響が読みにくいが4Q も多くの案件がある。 4Q の受注は落ち着いてくる前提としているが、12 月の受注は自動車の大口案件などもあり強い 状況が続いている。

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Q 日米欧でサーボ・インバータ・ロボットの受注が好調の背景は?

A サーボは日本では半導体・電子部品関係及びバッテリー向けなどの機械装置米国では半導体が 大きくけん引。欧州は木工機などの工作機械関連が強い。 インバータは地域特性があまりないが、21 年度に入ってグローバルで立ち上がってきており、省エネや CO2 削減に関する投資が活況を呈している。また、コロナ対策でコンプレッサーや半導体工場の空調 などが増えている。中国は港湾クレーンなどのインフラ投資も活況。 ロボットは Tier1 など部品メーカも含めて EV 関連の投資が拡大している。 米国は自動車以外で物流関連でのロボット活用もテーマとして出てきている。 半導体・バッテリーではサーボ・ロボットに加えインバータでもグローバルで好調。

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Q 2Q ではお客さまでの東南アジアのサプライチェーン混乱影響で売上が伸びなかったとのことだったが、 3Q ではどうだったか?

A 東南アジアのサプライチェーン問題は売上より仕入に影響しているが、お客さまにご迷惑をおかけして いる状況ではない。 サプライチェーンの問題が収束したとは言えないが、10 月がボトムで改善してきている

まとめ

まとめ
総じて、IR資料から本質的な部分を垣間見れる部分が意外と多い。四半期ごとでもしっかり記載されている。

IRから漏れ伝わるシリーズ

IRから漏れ伝わる事業環境分析|半導体製造装置メーカー:レーザーテック(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|EUV向け半導体マスクブランクス:HOYA(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|工作機械メーカー:DMG森精機(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|産業用ロボットメーカー:(株)安川電機
IRから漏れ伝わる事業環境分析【開示レベルC】|ファナック(株):産業用ロボット・工作機械・放電加工機・射出成形機メーカー
IRから漏れ伝わる事業環境分析【参考レベルC】|(株)ヒラノテクシード:塗工機・化工機メーカー(ロールtoロール)

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 注目企業の事業分析
業界企業名事業内容第1四半期第2四半期第3四半期期末
 半導体製造装置

 レーザーテック(株)半導体マスク欠陥検査装置等製造9月12月3月6月
 ローツェ(株)ウエハ搬送システム、FPD製造装置等5月8月11月2月
 工作機械・産業用ロボット ファナック(株) CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 6月 9月 12月3月