製造業経営コンサルタントの井上です。

自分のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

今までそのようなことを実行していましたが、せっかくその活動をしているので、ポイントだけでも共有できたらと考えて、四半期単位または半期単位になるかわかりませんが、定期的に実施してポイントを記録していることをブログにも残していきます。

この企業の注目ポイント

レーザーテック(株)の注目ポイントはなと言っても、

 ●半導体業界の装置メーカーであり、EUVに対応した検査装置メーカー

であることに付きます。特に、EUVに対応という点が注目ポイントです。更に、EUV用マスクブランクス欠陥検査装置(EUV光源を使うタイプ)では世界シェア100%です。EUV用マスク欠陥検査装置のうち、光源にEUV光を使いペリクル(フォトマスクの防塵カバー)付きフォトマスクの検査が可能な機種でも世界シェア100%、ディープUV光を光源に使ったペリクルなしのEUV用フォトマスク欠陥検査装置では過半数のシェアを持っています。

レーザーテック(株)の顧客は半導体メーカーで明確にどこかは有価証券報告書等に記載されてませんが、台湾の大手ファウンドリなどだと推測します。

ファウンドリ英語:foundry)とは、半導体産業において、実際に半導体デバイス(半導体チップ)を生産する工場のことを指す。ファブ(fab) と呼ばれることもある。(Wikipediaより

半導体は7nmになり更に微細化が進んでいます。現在のiPhoneは7nmで、次は5nmと言われています。更に先の3nmは計画が半年延期になりました。

【新型コロナ】アップル、「コロナショック」で3nmチップ投入延期 TSMC半年先送りを産業チェーンに通知 2020-04-14 11:14:53(EMSoneより
要は、今後需要が高まるEUV対応の半導体装置が重要になるということです。

現状の業績と株価

現在の業績は、2020年6月期 第2四半期決算説明会より簡単に。

【事業分析】レーザーテック(株):半導体マスク欠陥検査装置等メーカー 業績
(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

第二四半期ととして、売上はやや予想を下回ったが、受注額が大幅に予想を上回っている。これは他の半導体製造装置メーカーと同様に動きと思われる。

(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)
(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

受注額が装置メーカーの場合、業績の先行指数になります。受注後数ヶ月に売り上げたあがるので。

ヤフーファイナンスより

財務ハイライト

(レーザーテック(株)HP IR資料より)

ものすごい会社ですね。自己資本率は下がっていますが、まだ60%以上。

事業環境

まず「株主通信」より、2019年の半導体製造装置がやや落ち着いた状況になった理由が記載されていました。

当社グループの主要販売先である半導体業界では、 CPU(中央演算処理装置)の供給不足などによりパソコン およびデータセンター関連の需要が低迷し、スマート フォンの出荷も2年連続で前年割れとなりました。デー タ保存に使われるメモリーは生産調整が行われ、価格下 落が長期間にわたって継続するとともに、メモリーメー カーでは投資抑制が続きました。(「株主通信」より)

鉱工業指数(付加価値額生産)半導体・液晶製造装置 

また端的にレーザーテック(株)が成長企業として注目される理由も記載されています。

しかしながらロジック デバイスメーカーの最先端分野では、次世代のEUV(極端紫外線)リソグラフィを用いた半導体製造が量産のステー ジに入りつつあり、大手デバイスメーカーやマスクブラ ンクスメーカーがEUV関連分野でさらに積極的な投資を 行いました。この投資は今年も継続する見込みです。(「株主通信」より)

半導体がより微細化するに当りEUVが重要になり、そのEUVに対応した装置をレーザーテック(株)は製造しているということです。これから成長が期待できるというわけです。

レーザーテック(株)の事業領域は、半導体分野とその他のFPD等の分野になります。
(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

<半導体分野>

分野事業環境
 ロジックデバイス5G分野での需要により、EUV関連を中心に 最先端テクノロジーノードへの投資の継続が見込まれる
 メモリーメモリーデバイスの価格は下げ止まりが見られ、3D-NAND やDRAM向けの設備投資はCY2020年の再開が期待される
 イメージセンサスマートフォンでの多眼化、および中期的に車載向け用途が 見込まれ、引き続き成長が期待される
 パワーデバイスEVでのSiCデバイス採用に向け、各社の取組みが加速し、 市場の拡大が進みつつある

<その他>

分野事業環境
 FPD中国での10.5Gパネル向け投資は縮小・遅延を見込む 有機ELの投資は落ち込んだが一部で再開が期待される
 LiB民生品はモバイル関連を中心に緩やかに成長し、 車載用はEV化に伴う市場拡大に期待される

半導体製造装置の市場動向

(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

競合環境・シェアの状況

競合企業などは、以前の記事から見ると(やや古い記事ですが)

  ●米国のKLA―テンコール

この1社になるとのこと。

 ――日本の製造業は、韓国や中国勢の追い上げに苦しめられています。

 「韓国や中国に同様の製品をつくれるメーカーはない。光や電気を扱う技術のほか、画像処理や精密技術も求められるから、追いつくのは大変だろう」

 「競合は、ほぼ米国のKLA―テンコール1社。ここは幅広い製品を扱うデパートのような存在で、企業規模がずっと大きい。これに対して、うちは得意な製品に集中し、そこでシェアを高める戦略だ。半導体づくりに不可欠な材料の『マスク』や『マスクブランクス』の欠陥検査装置は、世界シェアがそれぞれ75%、100%になっている」 (世界的な半導体活況続くか 製造装置メーカー社長に聞く 聞き手・内藤尚志2018年2月5日 よい)

シェアに関しても、

半導体づくりに不可欠な材料の『マスク』や『マスクブランクス』の欠陥検査装置は、世界シェアがそれぞれ75%、100%になっている」

(世界的な半導体活況続くか 製造装置メーカー社長に聞く 聞き手・内藤尚志2018年2月5日 よい)

技術・製品動向

新製品開発の動向としては、EUV関連検査装置が挙げられる。今後のEUVの次世代装置の一角を担う製品と言える。

【事業分析】レーザーテック(株):半導体マスク欠陥検査装置等メーカー 製品1
(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

研究開発動向

研究開発費・設備投資に関しては「ファクトシート」を見ていきましょう。

【事業分析】レーザーテック(株):半導体マスク欠陥検査装置等メーカー 設備投資研究開発費

当然ですが研究開発費は伸びていいます。具体的には、研究開発費対売上高では、2019年6月期は12.5%と製造業としては非常に高い比率である。

製造・サプライチェーンについて

製品の製造に関しては、自社工場は開発を主に行うファブレスメーカーになる。IR資料にはサプライヤーがどこの会社かは記載されていないが、受託製造業や受託加工業のコンサルをしている立場としては、興味があるところである。今後、注意して情報を見ていく。

業績予想

(レーザーテック(株)2020年6月期 第2四半期決算説明会より)

受注予測が凄まじいですね。足の長い装置でも1年くらいの受注残ですが、現状の売上400億円に対して、2年分の855億の受注残が期末の予想となっている。市場の伸びと製品力の強さを表している受注予想である。凄いの一言です。

その後、上方修正されて受注残が1000億円を超える状況になってきている。

(楽天証券より)

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