製造業経営コンサルタントの井上です。

私のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

四半期ごとに発表されてますが、事業環境などが更新された都度、変化点や質疑応答に含まれる事業環境や動向、気になる点をまとめていきます。

今回は、産業用ロボットや工作機械メーカーのファナック(株)になります。

市況データ:産業用ロボット受注高・工作機械受注高

ファナックに関係する、産業用ロボットと工作機械の市況データを見ていきましょう。特に先行指標となる受注高を見ていき、その後、ファナックの業績等を見ていきます。

機械受注高 産業用ロボット

産業用ロボット

鉱工業生産指数 − 産業用ロボット

業績推移 2021年度 第3四半期

まずは業績推移ですが、第三四半期を終えて27.7%増と順調に推移。モーションコントロールの伸び率が35.1%とセグメント別でみても一番伸びています。

安川電機は、ロボットよりもモーションコントロールの方が売上が多いのですね。

(㈱ ファナック IRより)
(㈱ ファナック IRより)
(㈱ ファナック IRより)

決算短信:1.当四半期決算に関する定性的情報(四半期比較)

ファナックの四半期のIRの中で比較をする箇所としては、決算短信の当四半期決算に関する定性的情報となります。この部分が、変化点として、最新の四半期での変化・追加を赤文字、前期の四半期から削除された部分を青文字、業績数値的な部分を緑色にしてます。

連結経営成績に関する説明(四半期比較)

【 2021年度 第2四半期 】

当第2四半期連結累計期間(2021年4月1日から9月30日まで)における当社グル ープを取り巻く状況につきましては、製造業全般において新型コロナウイルス感 染症の影響等で減少していた設備投資が回復し活発に行われるようになりました。 一方で、世界的なサプライチェーンにおける半導体等の部品の不足による生産活 動への影響が顕在化する等、先行き不透明な状況が続いております。

このようななか、当社グループにおきましては、新型コロナウイルスの感染拡 大防止を最優先としつつ、お客様への商品の供給とサービス活動の継続に努めて きました。

当第 2 四半期連結累計期間の業績は、売上高が 3,514 億 90 百万円(前年同期比 52.5%増)、経常利益が 1,078 億 22 百万円(前年同期比 182.1%増)、親会社株主 に帰属する四半期純利益が 786 億 49 百万円(前年同期比 179.8%増)となりまし た。

【 2021年度 第3四半期 】

当第3四半期連結累計期間(2021年4月1日から12月31日まで)における当社グル ープを取り巻く状況につきましては、製造業全般において新型コロナウイルス感染 症の影響等で減少していた設備投資が回復し活発に行われるようになりました。しかし、世界的なサプライチェーンにおける半導体等の部品の不足による生産活動への影響が長期化する等、先行き不透明な状況が続いております。

このようななか、当社グループにおきましては、新型コロナウイルスの感染拡大 防止を最優先としつつ、お客様への商品の供給とサービス活動の継続に努めてきま した。

当第3四半期連結累計期間における連結業績は、売上高5,402億50百万円(前年同 期比44.0%増)、経常利益1,615億34百万円(前年同期比114.2%増)、親会社株主に 帰属する四半期純利益1,187億72百万円(前年同期比114.6%増)となりました。

(㈱ファナック IR資料より)

事業の概況 : FA部門について(四半期比較)

【 2021年度 第2四半期 】

FA部門については、CNCシステムの主要顧客である工作機械業界の需要は、中国をはじめとして、各主要市場で堅調に推移しました。これを背景に当社のCNC システムの売上も増加しました。
レーザについては、中国市場および欧州市場で 回復基調にありますが、海外メーカとの厳しい競争が継続しています。これらの 結果、FA部門の売上高は1,039億68百万円(前年同期比54.2%増)となりました。

【 2021年第3四半期 】

FA部門については、CNCシステムの主要顧客である工作機械業界の需要は、堅調であった中国に加えて欧米でも増加する等、各主要市場で堅調に推移し、当社の CNCシステムの売上も増加しました。
レーザについては、海外メーカとの厳しい競 争が継続しています。これらの結果、FA部門の売上高は 1,638 億 54 百万円(前年 同期比 56.0%増)となりました。

(㈱ファナック IR資料より)

事業の概況 : ロボット部門について (四半期比較)

【 2021年度 第2四半期 】

ロボット部門については、中国でIT関連、EV、重機、建機向けを中心に売上が 堅調に推移しました。米国でも一般産業向けおよびEV関連の需要を取り込んだ自動車産業向けが堅調でした。また、欧州でも一般産業向けが好調に推移し、売上 が増加しました。国内では、昨年10月を底に売上は回復しています。これらの結果、ロボット部門の売上高は1,211億71百万円(前年同期比37.6%増)となりまし た。

【 2021年度 第3四半期 】

ロボット部門については、中国で IT 関連、EV、重機、建機向けを中心に売上が 堅調に推移しました。米国でも一般産業向けおよび EV 関連の需要を取り込んだ自動車産業向けが堅調であった他、欧州でも一般産業向けが好調に推移し、売上が増加しました。また、国内でも、低調であった前年同期に比べ売上が増加しました。 これらの結果、ロボット部門の売上高は 1,980 億 70 百万円(前年同期比 38.1%増) となりました。

(㈱ファナック IR資料より)

事業の概況 : ロボマシン部門について (四半期比較)

【 2021年度 第2四半期 】

ロボマシン部門については、
ロボドリル(小型切削加工機)は、パソコン、タ ブレット市場向けの旺盛な需要を受け、売上が増加しました。
ロボショット(電動射出成形機)は、IT関連、医療市場向けの需要が好調に推移し、売上が増加しま した。
ロボカット(ワイヤ放電加工機)も、IT関連、自動車部品市場向けの需要が 好調に推移し、売上が増加しました。これらの結果、ロボマシン部門の売上高は 810億69百万円(前年同期比105.5%増)となりました。
サービス部門については、売上が例年並みに回復しています。サービス部門の 売上高は452億82百万円(前年同期比27.6%増)となりました。

【 2021年度 第3四半期 】

ロボマシン部門については、
ロボドリル(小型切削加工機)は、中国でパソコン、 タブレット市場向けの旺盛な需要を受け、売上が増加しました。
ロボショット(電動射出成形機)は、IT 関連、医療市場向けの需要が好調に推移し、売上が増加しま した。
ロボカット(ワイヤ放電加工機)も、IT 関連、自動車部品市場向けの需要が 好調に推移し、売上が増加しました。これらの結果、ロボマシン部門の売上高は 1,092 億 29 百万円(前年同期比 54.0%増)となりました。
サービス部門については、売上が例年並みに回復しています。サービス部門の売 上高は 690 億 97 百万円(前年同期比 23.7%増)となりました。

(㈱ファナック IR資料より)

四半期比較での変化点
FA部門    :堅調であった中国に加えて欧米でも増加する等、各主要市場で堅調に推移
ロボット部門 :市場動向に変化なし
ロボマシン部門:ロボドリルで中国でパソコン、 タブレット市場向けの旺盛な需要を受け、売上が増加

2021年度 第3四半期 決算 質疑応答

質疑応答部分で市場環境で気になるポイントを、要約しました。

Q.中国を中心とする受注環境について

A.中国のFAが減少あるが、生産が追いつかず受注残が増えたため顧客が発注を調整している
  需要は引き続き旺盛で我々が供給できればもつと売れる状況
  ロボットの増加は、自動化の動きが盛んで需要が非常に旺盛であるため
  需要は、目立つのは車の電動化関係、IT関係

Q.ロボットの受注高が過去最高水準だが、全般的に需要が上がってきているだけなのか?

A.コロナ禍を契機に自動化への動きが強まっている
  産業全般でロボット化の引き合いが非常に強くなっています。
  中でも目立つのは車の電動化関連で、米州でも中国でも、
  車の電動化関連は、バッテリーや車体周りなど、ロボット化の要求が非常に高まっている印象
  中国ではIT産業が集積して自動化に注力しており、そうした関連の引き合いも非常に強い


Q.FAの受注水準について、今後の需要を考えると増加はあまり期待できないのでしょうか?

A.FAの受注について「中国・韓国・台湾で減少」と書いていますが、これは注残がだいぶ増え発注調整
  がかかっていたためです。実際には中国での需要は非常に旺盛で、もし我々がもっと供給できるのであ
  れば、もっと注文をいただける状況です。


Q.FAが伸長する要因として、中国のNC化率の上昇や、今回ハイライトしている油圧制御から電動制御への置き換えや省エネの部分は影響しますか?

A.油圧制御から電動制御への置き換えが明確に我々への注文として現れているかというとまだそういう
  段階でありません。しかし、工作機械のNC化の流れ、機械の電動制御への置き換えはどんどん強まっていくと思います。

(㈱ファナック IR資料より)

まとめ

まとめ
IRのから漏れ伝わる点としては、少ないが中国市場初め、EV関連などさまざまな市場が上がってきている状況であるという点に関しては確認できた。ただし、総じて、IR資料から本質的な部分を垣間見れる部分がかななり少ない。【参考レベル C 】
その他として、気になっていた点として営業利益率が上がりつつあることは安心をしました。
今後、市場動向を垣間見ていくという趣旨なので、ファナックを見ていくかは微妙です。

IRから漏れ伝わるシリーズ

IRから漏れ伝わる事業環境分析|半導体製造装置メーカー:レーザーテック(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|EUV向け半導体マスクブランクス:HOYA(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|工作機械メーカー:DMG森精機(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|産業用ロボットメーカー:(株)安川電機
IRから漏れ伝わる事業環境分析【開示レベルC】|ファナック(株):産業用ロボット・工作機械・放電加工機・射出成形機メーカー
IRから漏れ伝わる事業環境分析【参考レベルC】|(株)ヒラノテクシード:塗工機・化工機メーカー(ロールtoロール)

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 注目企業の事業分析
業界企業名事業内容第1四半期第2四半期第3四半期期末
 半導体製造装置

 レーザーテック(株)半導体マスク欠陥検査装置等製造9月12月3月6月
 ローツェ(株)ウエハ搬送システム、FPD製造装置等5月8月11月2月
 工作機械・産業用ロボット ファナック(株) CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 6月 9月 12月3月