製造業経営コンサルタントの井上です。
緊急事態宣言が開けて、街にも人が溢れつつある状況です。飲食業などもかなり大変で話題になってますが、製造業も大きさ産業である自動車産業が大きく生産を落としています。4月の鉱工業生産指数などを見ていくと、明らかに産業の動向が見えてきているので、見ていきたいと思います。
はじめに
まずは今後とは長期的部分もありますが、ここ1〜2年を中心に考えていきたいと思います。製造業の中で大きな産業を占めている自動車業界にまず注目してきたいと思います。やはり見るべきはトヨタ自動車でしょう。
今期(2020年度)の決算予想を皆さんご存知の「トヨタイムズ」で語られています。
2020年度は生産台数2割減を予想
これはリーマンショックの時どうだったと比較するとわかりやすのですが、その時は生産台数15%減で大赤字でした。先程のの2020年度の予想では営業利益5000億ということで黒字です。リーマンショックからのトヨタ自動車の頑張りが見えてきます。自動車業界の全体では、他のメーカーはもっと悪いと予想しますので、悪くなると予想して良いでしょう。(トヨタ自動車も厳し目に予想しているとは思いますが。)
No | 業界 | 今後の動向 |
1 | 自動車 | × |
2 | 航空機製造 | × |
3 | 工作機械 | △〜× |
4 | 建設機械 | △ |
5 | 半導体製造装置 | ◎ |
6 | 電子部品 | ○ |
7 | 産業用ロボット | ○ |
今回、統計データ的に明確にできないのですが、現場での情報でリチウム電池や次世代電池関連の装置業界は関西中心に多くの注文残を抱えているようです。
自動車産業
自動車業界に関する最近の動向が分かる経済指標を見てきます。
輸出動向
自動車の輸出額ですが、これは3月〜4月生産の自動車が輸出されていると思われます。次の四輪自動車の鉱工業生産指数を見ると4月は激減しています。ただ3月の生産はまだ96.9あり2月に比べたら104.9からなので減少はしてます。それにしても4月の輸出額の減少が大きいと感じます。
鉱工業生産指数 四輪自動車
鉱工業生産指数 | 2月 | 3月 | 4月 |
四輪自動車 | 104.9 | 96.9 | 55.3 |
鉱工業生産指数 自動車関連部品
鉱工業生産指数 タイヤ・ゴム製品
今後の自動車業界として、コロナの影響により経済活動が停滞することによって耐久消費財の売れ行きは減少は間違いない。それとコロナの影響としてシャアリングビジネスも長期的な停滞を見込まれる。いい面と悪い面が自動車業界に与えると考えられる。大きな産業の停滞が他の業界への影響は避けられない。
航空機産業
鉱工業生産指数 航空機部品
鉱工業生産指数 ジェット燃料油
航空機産業は今まで注文残を何年も持っている長期的に魅力な産業でした。しかし、コロナの影響をかなり受ける産業になります。感染防止の為の渡航禁止が続き、人の往来が制限されてます。解除が徐々に進みますが、ワクチンが出来なければ活発に人が移動していかないことは間違いないと思います。またリモートで人と人がつながるテクノロジーも定着し、今後、VR・AR系のテクノロジーも進むと更に人が移動しない時代になります。
三菱航空機(本社愛知県豊山町)が開発を進める国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」を巡り、中部の関連企業に困惑が広がっている。新型コロナウイルス感染症の影響による航空機需要の急減など
また「スペースジェット」の事業も縮小して、いずれ停止してしまうのではというニュースも出ています。
今後の航空機製造の産業においては、少なくても3〜5年のレンジで回復していくことはかなり難しい産業になると言わざる得ないです。
工作機械産業
鉱工業生産指数 工作機械(マシニング・旋盤)
工作機械受注高
工作機械産業においては、現状、工作機械メーカーの現場は週休4日になっているところもあります。
コロナの影響で他業界の産業が減少した影響で低迷しています。ただグラフを見て頂くと、もう2年以上前から減少が止まらない状態です。確かに各種産業が低迷して設備投資が減少という建前はあるのですが、流石にこの長期の低迷には疑問があります。もう一つの要因としては、米中貿易戦争の関税の問題が大きいと考えます。更に考えなくて行けないこととして、日本の工作機械メーカーの国際的な競争力がどの程度維持されているのか?という問いです。確かに日本の工作機械メーカーは良いのですが、製品的に金属部品と制御との組み合わせだけです。半導体製造装置と違いプロセスにおいて化学的要素は、ほとんどないです。何が言いたいかというと、もう既に他の国(中国、台湾、韓国等)のメーカーが追いつき安い機械ということです。
これらを考えると短期的長期的に厳しくなると予想せざるを得ないです。建設機械産業
鉱工業生産指数 建設機械
機械受注統計 建設機械
建設機械生産実績統計(金額ベース)
建設機械業界は、昨年の台風震災の影響でサプライヤーの工場が浸水して生産がストップしたという影響がありました。その後、生産が回復して現在に至っています。
生産ができない時期があったので、注文残が増えて生産が続くと思ってましたが、鉱工業生産指数の4月で100を切る状況に早くもなってきました。機械受注高も減少トレンドに入ったようです。
世界的な建設・建築もコロナの影響でストップしているなど、短期的には影響が大きそうです。
装置産業|半導体製造装置
ここからは良い業界を見ていきたいと思います。
鉱工業生産指数 半導体製造装置
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は6月9日(米国時間)、2021年の半導体前工程ファブに対する半導体製造装置の投資額が前年比24%増の677億ドルとなり、過去最高を更新する見込みであると発表した。
半導体製造装置業界の今後についてですが、短期的な1〜2年は間違いなく成長していくでしょう。要因としては、7nm以下の半導体が主流になるについてEUV装置が求められます。設備がEUV対応の製造装置が導入が進みます。非常に高額な設備であり、微細化の流れは止まりません。
コロナ影響でもリモートやインターネット、ICTなど様々プラスに動いています。半導体はセンサ、CPU、メモリなど、現在の電子機器に必要不可欠な部品であり、データセンタなどでも大量に必要になってきます。更に、自動車のEV化、自動運転など次世代の自動車が台頭してきた時には、パワー半導体がより必要になってきます。
今後はテクノロジーが世の中を変える中心が半導体であり、5Gとの関連で用途が急拡大していくことは間違いありません。
EUVに対応したフォトマスクの検査装置メーカーの「レーザーテック」の今期6月決算で売上400億円、経常140億円になり、注残が1000億円を超えている状況です。
注目企業の事業分析 | ||||||
業界 | 企業名 | 事業内容 | 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 期末 |
半導体製造装置 | レーザーテック(株) | 半導体マスク欠陥検査装置等製造 | 9月 | 12月 | 3月 | 6月 |
ローツェ(株) | ウエハ搬送システム、FPD製造装置等 | 5月 | 8月 | 11月 | 2月 | |
工作機械・産業用ロボット | ファナック(株) | CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 | 6月 | 9月 | 12月 | 3月 |
電子部品産業
鉱工業生産指数 電子部品・デバイス工業
鉱工業生産指数 電子デバイス・電子部品等
鉱工業生産指数 水晶振動子
鉱工業生産指数 固定コンデンサ
鉱工業生産指数 ファインセラミックス
統計データから見る限り、全体的には少し悪くはなっているが他業界に比べまだ堅調の方である。
中身を見ていくと、水晶振動子、固定コンデンサ、ファインセラミックス(パッケージ、圧電機能端子)など大きく上昇傾向の電子部品もある。日本のメーカーでスマホ部品として強いメーカーも多い。半導体とも連動することもあり、比較的有望の業界と言える。
産業用ロボット・自動化業界
鉱工業生産指数 産業用ロボット
機械受注統計 産業用ロボット
この業界も自動車業界と密接に関わっています。しかしながら、統計データから見ても大きな落ち込みはやや少ないと感じています。
確かにここ最近はロボットSierの案件を見ていても、延期や中止の案件もあります。ただ新規の案件もあり需要は間違いなくある状態が見えています。半導体製造装置などプロセス明確な設備とうしは、業界の動向によって左右されますが、ロボットなどを使用した自動化ニーズは心理的要素で需要が変動することが多いと感じてます。この点を考えると、コロナの影響も比較的出やすいです。読みづらいところはありますが、比較的堅調な業界と言えると判断します。
まとめ
繰り返しになります、自動車業界の2割減のインパクをしっかり考えつつ、他の業界の動向も把握をして早めに対策を取ることを強くおすすめします。
No | 業界 | 今後の動向 |
1 | 自動車 | × |
2 | 航空機製造 | × |
3 | 工作機械 | △〜× |
4 | 建設機械 | △ |
5 | 半導体製造装置 | ◎ |
6 | 電子部品 | ○ |
7 | 産業用ロボット | ○ |
今回、統計データ的に明確にできないのですが、現場での情報でリチウム電池や次世代電池関連の装置業界は関西中心に多くの注文残を抱えているようです。