製造業経営コンサルタントの井上です。

昨日の続きでセミナーで話した内容を少し。今日は、日本の生産性が低い点についてです。

各国のGDPの推移・GDPから見た日本の立ち位置

各国のGDPの推移

各国のGDPの推移

米中とのGDPの差

日本の経済全体(GDP)から見た場合の現在の立ち位置として、2018年のGDPで見ると米国対日本では約4倍の差。対中国では約2.6倍の差をつけられている現状があります。中国に関しは、6〜7年前にGDPが抜かれ、数年で約2.6倍の差がつけれています。

また世界のGDPに占める日本のGDPの割合も、1990年年代の20〜25%から2018年の約6%です。将来的には、年を追うごとにシェアが低下して影響力が低くなっていきます。

時間あたりの労働生産性から見た日本の課題

時間あたりの労働生産性

(出典)労働生産性(OECD)名目GDO(IMF)(作成)masahi inoue

時間あたりの稼ぎに当たる「時間当たり労働生産性(ドル/h)」を見ていくと、世界で20位です。総量のGDPでは世界3位であるが、生産性になると20位に落ちるのです。

ちなみに日本の人口は世界で上位10位と意外と多いほうです。

結論として、GDPを構成する「人口✕生産性」で考えても、生産性が低いということが言えます。

先進国企業のマークアップ率(付加価値率)の推移

先進諸国のマークアップ率(付加価値率)」

欧米とのマークアップ率(付加価値率)から見ても、近年、差がつけれています。これは製造業も非製造業もすべて含まれているので、非製造業のマークアップ率がかなり向上している結果が大きいと見ています。

企業年齢と利益率(ROA)の関係

企業年齢と利益率(ROA)

そして企業年齢と利益率(ROA)を見ると、日本は企業年齢が古くなると利益率が明らかに悪くなる傾向にあります。

産業用ロボットの稼働台数の推移

日本の産業用ロボットの稼働台数の推移

先程のGDPシェアと照らし合わせて見ると、生産性が高い時期には日本で稼働している産業用ロボットが他国に比べて圧倒的に高かかった事実があります。

近年、日本の産業用ロボットの稼働台数が減少傾向なのは、自動車などの量産品が現地生産化が進み、日本から生産が移っている現状もあることを考慮にいれて考えていきたい。

「産業用ロボットを導入している企業」と「導入していない企業」の全要素生産性の差

次のデータ等は、スペインでの産業用ロボットを導入している企業とそうでない企業の生産性においての差を示した研究です。

技術進歩や生産の効率性を示す「全要素生産性」

  • 全要素生産性とは、産業用ロボットの導入による「直接的な効率化」と「間接的な効率化」の2つだと定義
  • 直接的な効率化とは、産業用ロボットよって実際の生産ラインがどれだけ効率化したか
  • 間接的な効率化とは、産業用ロボットの導入によって生じた労働者の配置転換などによる効率化のこと
  • 1990年から2015年にかけて産業用ロボット未導入企業でも全要素生産性が100ポイントから200ポイントに向上。導入済み企業は100ポイントから300ポイントに増加
  • 特に、直接的な効率化による影響は約70ポイント弱、間接的な効率化は30ポイント弱を示しており、産業用ロボットの製造現場への影響は単なる生産ラインの効率化だけにとどまらないことがわかった。

研究チームによると、産業用ロボットを導入した企業は5年以内に20%から25%もの産出量の増加がみられたとのこと。さらに「ロボットが仕事を奪うのでは?」という一般的な懸念に反して、産業用ロボットを導入すると総雇用が約10%増加することも判明しました。

ロボット生産性

(Gigazen https://gigazine.net/news/20190711-robots-and-firms/より)

まとめ

GDPの要素人口と生産性

最後に、結局、製造業及び日本がより良くなるためには、ターゲットの市場規模がどのように今後なるのかをまず考えなくてはいけません。

ベースとなる人口は絶対的に考えなくては行けなくて、国内は人口減少、海外は人口増加で経済規模も増加傾向にあります。海外市場と関係を持てる企業は積極的に持つ必要あります。

次にできることは、生産性をいかに上げるかということです。

これは今までのやり方をどう変えるかという、非常にシンプルに考える必要がります。日本は今までのやり方に固守しすぎています。変化を嫌います。

産業用ロボット稼働台数を見てみると、過去、日本は決して新しいものを導入しない国ではなかったはずです。

また先日述べました、

ものづくりは人づくり19

で書いてありますが、製造業は「ハードとソフトの融合」であり、ロボットやシステムなどのツールを使いこなして、人間にしかできないことは人がするとうように、少し理屈っぽくなって進めていく必要があります。

まとめ

日本や日本の製造業は、明らかに生産性を落としているが、気づいていない人がかなり多い。まず日本の製造業は凄いけど、相対的に昔よりは凄くない。だから、具体的な変化を起こし生産性向上等に対しても行動を起こす必要がある。
各企業、各個人が、具体的に何を変えていくか考えて行動することが必要。