製造業経営コンサルタントの井上です。
今日は、産業用ロボットメーカーのとある記事を見て思ったことを書いていきます。
産業用ロボットメーカーが現場に降りてきた
ダイヘンは産業用ロボット事業において、周辺機器とのシステム構築をセットにした提案を強化する。ロボットシステムインテグレーター(SIer)との連携を増やして、レーザー加工や組み立てなどの用途提案の幅を拡大。中小企業のロボット導入を後押しする。2023年度までに国内でのロボット事業に占めるシステム構築とのセット提案の割合を、現在の15%から30%へ引き上げる。(日刊工業新聞より)
このダイヘンの記事を見て感じたこととしては、
産業用ロボットはいわゆる標準品であり、今後は中国メーカー含め参入が相次いてくる。そして、価格競争になり産業用ロボットメーカーも淘汰の時代が必ずきます。より自社に特長を付けて、差別化するという意味で、産業用ロボットメーカーがアプリケーション(用途)特化・提案を事業として考えだしたということを意味します。
産業用ロボット(ロボットSier)の現状
産業用ロボットの受注と鉱工業生産指数を見てみると(2021年4月20日段階)、明らかに増加傾向にある。
今後もデジタル化、IoT化のリアルと繋がる接点としてのロボットは増えていくでしょう。
ロボットメーカーとロボットSierの役割
今までの産業用ロボットとロボットSierの役割は、下図にあるようにロボットシステムインテグレーター(ロボットSier)がユーザーの課題を把握して、最適なロボット、その他設備をインテグレートしていく役割になっています。
従って、産業用ロボットメーカーは直接ユーザーとやり取りをせずに、システムインテグレーターに任せます。メーカーはロボットの開発と生産に特化しているのが現状です。
ロボットメーカーとロボットSierが競合に
ロボットシステムインテグレーター(ロボットSier)もクライアントが多いのですが、戦略などこのブログでもいろいろ書いて来ました。詳しくは下記の記事を御覧ください。
要は、用途(アプリケーション)別の強みを付けたほうが良いよということです。上手くいけばロボットシステムのメーカーになれる可能性があります。
しかし先日のダイヘンの記事を見て、もっと早くロボットSierは自社に強みを付けないとせっかくメーカー化のチャンスもあったのに、それが徐々に難しくなって元請けから下請けに成り下がる可能性もあります。
またダイヘンは国内のロボットメーカーになりますが、中国のロボットメーカーなども用途特化型のロボットシステムを今後当然出してくるでしょう。
国内のロボットSierは、あくまでの受託製造業なので、現状業績良いかの決定的要因は良い顧客を持っているかどうかにかかってます。これは当たり前ですが、ロボットSierは経験値ビジネスでもあるので経験をより多く積んだロボットSierのレベルが向上していきます。大手の自動車メーカー関連のTier1、Tier2あたりを顧客を持つロボットSierはいろいろな経験値を踏みつつ、仕事があまりと切れることがない。従って、業績のベースとして、特定顧客にベッタリになります。これはこれで悪いことではありません。その上で、用途特化などメーカー化を狙って、より容易に製造現場にロボットを導入しやすいようにしてもらいたいです。用途特化型のロボットシステムメーカー化ができれば、設計工数を減らすことができる収益性を向上させる可能性を秘めています。
このようにロボットシステムインテグレータ(ロボットSier)には、正しい成長してほしいのですが、ダイヘンのように産業用ロボットメーカーが、用途特化した提案を自ら行おうとする大手メーカーが既に動きつつあります。
ロボットSierには、今後も下請けに甘んじ続けるのでなく、より特長を持ち収益性を上げれるメーカー化(特長を明確にする)ことに積極的になって頂きたい。