製造業経営コンサルタントの井上です。
自分のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。
今までそのようなことを実行していましたが、せっかくその活動をしているので、ポイントだけでも共有できたらと考えて、四半期単位または半期単位になるかわかりませんが、定期的に実施してポイントを記録していることをブログにも残していきます。
この企業の注目ポイント
ファナック(株)に関しては、基本的には素晴らしい機械メーカーであることは間違いないと思います。セミナーをご一緒させて頂いた時には、社員の方を非常に紳士的で優秀な方が多いと感じました。
その中で気になる点は、営業利益率の低下です。
売上高は産業機械なので大幅の上下があるのは当然です。ただし利益率に関しては、製品力を表す指標になります。この営業利益率が下降トレンドになっている点が注目点です。
また各指標の成長率などから見た成長バランスを見てみる。
2019年度に関しては、成長バランスの理想バランスの逆である、逆バランスになっている。
現状の業績と株価
現在の業績は2019年度の決算説明会 資料より。
2019年度 連結実績
売上高に関しては、産業機械は繁忙があることが業種特性としてあるのでそれほど気になりません。長期トレンドとしては、成長している優良メーカーです。
連結売上高・損益 年間推移
冒頭に申し上げましたファナックの経営において心配な点としては、営業利益率です。
2019年度 第4四半期(3ヶ月)連結実績
連結 部門別・地域別売上高 年間推移
連携 部門別売上高
連結 地域別売上高
財務ハイライト
※アニュアルレポート2020(2020年3月期)がまだ発行されていないので割愛
事業環境
ファナックの事業としては、工作機械と産業用ロボットの事業環境として直近では
産業用ロボット
工作機械
2020年3月期決算短信より、気になるワードを抽出してみると、
世界的に、機械需要への影響が大きい自動車関連への投資が冷え込んでいる状況です。レーザにつきましては、拡販に努めましたが、海外メーカとの競争がさらに厳しさを増しています。
ロボマシン部門につきましては、ロボドリル(小型切削加工機)は、IT関係の 一時的需要がほぼなくなりましたが、自動車部品市場への拡販に注力しました。 しかしながら、自動車関連も当期後半から減速したため、売上が減少しました。(2020年3月期 決算短信より)
自動車業界の設備投資が大きそうです。レーザについてはと書いてますが、全般的に海外メーカーとの競争激化もあるのでしょう。
ここに来て、成長のけん引役だった中国市場も成熟が鮮明になってきた。中国機床工具工業協会(CMTBA)のデータを野村証券が集計したところ、18年のNC装置を搭載した工作機械の生産台数は前年比6%減の19万台だった。2000年代には年4~5割伸びていたが、12年から20万台前後で横ばいが続く。「NC装置の販売が頭打ちとなりつつある」(野村証券の斎藤克史氏)
(日本経済新聞より)
競合環境・シェアの状況
技術・製品動向
CRXについて
Robot CRシリーズの協働ロボットでは、構造的に通常の産業用ロボットと同じで安全装置がついているとはいえ挟み込む危険性があるので、CRXシリーズができてきたと言われています。今後は、期待です。
デジタルユーティリティクラウドについて
FIELD Systemはまずは大手中心になると思います。昨年の秋頃に導入した中小企業では、全国でかなり導入がはじめな方でした。やはり費用的にはかなりかかるので、どこまで普及するのか、IoTがらみのシステムで主導権を取れるのかが今後の注目すべきポイントです。
研究開発動向
営業利益率を下げている大きの要因の「設備投資費」に関しては、2019年度半減ですね。研究開発費は513億円とほぼ横ばいです。
売上高/研究開発費 ✕ 100 = 10.1% 2019年度
売上高/研究開発費 ✕ 100 = 8.8% 2018年度
2019年度は10%以上あり非常に高い水準であるが、これは売上高が下がった営業が大きい。2018年度を見ると8.8%と決して低くない。
製造・サプライチェーンについて
ファナックの製造体制・サプライチェーンですが、部品加工や組立などは社内で自動化を相当割合やられている。以前、セミナーをご一緒した際には、95%程度は自動化されていると言われておりました。
業績予想
売上高 推移
ファナックの業績予想としては、産業用ロボットに関しては新型コロナウィルスの影響もありより自動化のニーズは間違いなくあると考えられます。工作機械に関しては、他国の工作機械メーカーの進化によって競争力を失う可能性も無いわけでもないと考えらます。
現状のアニュマルレポート2019のデータと2019年度と2020年度の予測をグラフに足していくとコロナの影響がありますが、下降トレンドにしばらくはなりそうです。
※なお、本ブログは、本ブログ作成者が細心の注意を払い判断した出所からの情報に基づき作成されています。ただし、本ブログの記載内容が真実かつ正確であり、重要な事項の記載が欠けていないことを保証するものではありません。
その他 注目企業の事業分析
注目企業の事業分析 | ||||||
業界 | 企業名 | 事業内容 | 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 期末 |
半導体製造装置 | レーザーテック(株) | 半導体マスク欠陥検査装置等製造 | 9月 | 12月 | 3月 | 6月 |
ローツェ(株) | ウエハ搬送システム、FPD製造装置等 | 5月 | 8月 | 11月 | 2月 | |
工作機械・産業用ロボット | ファナック(株) | CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 | 6月 | 9月 | 12月 | 3月 |