部品加工の

Xometryプラットフォームの成長

から見る未来①

部品加工業の経営コンサルタントの井上です。

今回は、アメリカのベンチャーである「Xometry」というマーケットプレイスの会社が成長をしており、遂に工業系のプラットフォーマーが誕生してか?また軒並み日本発の部品加工のプラットフォーマーが苦戦している中、Xometryが日本に進出して成り立つのか?などなど、考察していきます。

何回かに分けて書いていこうと思います。まずは、Xometryとは?という基本的な部分です。

「Xometry」とは

「Xometry」の情報は日本には少ないので、SEC Edgar Filing Trackerの「Xometry」より考察してみることにする。

「Xometry」の会社概要

Xometryは、アメリカのメリーランド州ゲティスバーグに本社を置く、製造業オンラインマーケットプレイス運営会社です。2013年にRandy Altshuler氏とLaurence Zuriff氏が共同創業しました。

ミッションは、「To accelerate innovation by providing real time, equitable access to global manufacturing capacity and demand.」(グローバルな製造能力と需要へのリアルタイムかつ公平なアクセスを提供し、イノベーションを加速する。)となっています。

サービスサイトURL:https://www.xometry.com/

「Xometry」のビジネスモデル

Xometryのビジネスモデルは、各種部品加工(切削、板金、レーザー、ウォータジェット、射出等)のオンラインマーケットプレイスです。

部品の3D CADデータを、Xometryのオンライン見積もりサイトにアップロードし、加工方法、材質(例えば、アルミニウム・銅・プラスチック・etc)、仕上げ処理など、いくつかの条件を選択すると、見積もり価格が提示されます。ここまでは加工の種類に違いがあるが、日本では「meviy」や「プロトラブズ」「CADDi」などがある。「プロトラブズ」は自社設備でほとんどを加工している。「meviy」は今までのカタログ販売の時に構築したサプライチェーンがあり、ややXometryとは違う。日本では「CADDi」が同様にビジネスモデルを取っている。

Xometryは、顧客の注文をアルゴリズムが最適かつ製造可能と判断したサプライヤーパートナー(加工業)に転送し、加工パートナーは注文を受け入れるかどうか決定します。

サプライヤーパートナー(加工業)は、自社の営業等からでなくマーケットプレイス上から受注でき、また自社設備のダウンタイムを回避し、製造キャパシティを最大限活用できるようになります。

また、Xometryは、サプライヤーパートナー同士の交流を促進するような支援もしており、パートナー会社はネットワークに参加することで、経営改善のtipsを入手したり、新しいツールの情報を得たり、営業機会だけでないメリットを得ることができるようです。

「Xometry」が目指すの課題解決

Xometryのオンラインマーケットプレイスには、発注者と部品加工業(サプライヤーパートナー)の2つの利害関係者がいます。。それぞれが、製造業特有の課題を抱えており、Xometryはどちらの課題も解決しようとしています。

Xometryは部品加工業(サプライヤーパートナー)を、「当社のプラットフォーム上で買い手のために製品を製造することを当社が承認したか、当社の金融サービスや消耗品の購入など、当社のセラーサービスを利用した個人または企業」と定義しています。

部品加工業(サプライヤーパートナー)の多くは、中小機械加工業です。営業などに豊富な人材を抱える大手と異なり、「加工する」以外のリソースが不足している事が多いです。

発注者も部品加工業(サプライヤーパートナー)も、それぞれ違った課題を抱えています。

発注者は、品質や納期のばらつきがある部品加工業から、不透明な価格で調達しなければいけない、という課題に直面しています。

オンラインマーケットプレイスが登場する前、発注者は、長年のお付き合いで紐ついた特定の部品加工業(サプライヤーパートナー)から、部品を調達していました。お付き合いのある「特定の部品加工業(サプライヤーパートナー)」が加工できない部品を調達する場合、新たなセラーを探し出し、価格・納入時期を交渉しなければなりません。各部品加工業(サプライヤーパートナー)を比較し、少しでも安く品質のよい先から購入しようとすると、その分調達担当者の作業負荷が大きくなります。

そこでXometryは、発注者に、数クリックで最適なセ部品加工業(サプライヤーパートナー)を見つけ出し、独自算出した見積もり価格を即座に提示し、部品を発注できるサービスを提供することにしました。

部品加工業(サプライヤーパートナー)の課題は売上が安定しないことです。多くの部品加工業(サプライヤーパートナー)は、優れた技術を持っている一方で、営業リソースの不足によって顧客開拓能力が限定的で、需要が安定しないため、財務的に苦しい状況にあります。

部品加工業(サプライヤーパートナー)には、さまざまな発注者からのアクセスを提供し、また経営改善に資するサービスを提供します。例えば、主要ブランドの工具・材料・消耗品を低価格で購入することができたり、営業支援ツール・経営管理ツールを使うことができたり、Xometryのサプライヤーパートナーネットワークに加入するメリットが用意されています。

「Xometry」 のこれまでの軌跡

Xometryは、2013年に創業してから7年後では四半期売上を約49億円。年間換算すると200億円の売上を上げていることになります。

  • 2014年 売上80万ドル(≒1億円)。初めての取引は3Dプリント品だったようです。

  • 2015年 売上300万ドル(≒3億円)(前年比+275%)

  • 2016年 売上760万ドル(≒8億円)(前年比+150%)

  • 2017年 売上1,700万ドル(≒19億円)(前年比+120%)。射出成形品の取扱い開始。

  • 2018年 売上3,840万ドル(≒43億円)(前年比+125%)。Autodesk(アメリカの3D CADソフト開発大手)と提携。

  • 2019年 売上8,020万ドル(≒90億円)(前年比+110%)。アジア・欧州に進出。セラー向けサービス提供開始。この年から、損益計算書が公開されています。粗利益1,500万ドル(≒17億円、粗利益率19%)、営業損失3,100万ドル(≒34億円)。

  • 2020年 売上1億4,140万ドル(≒150億円)(前年比+76%)。セラー向けに、金融サービス提供開始。粗利益3,300万ドル(≒36億円、粗利益率23%)、営業損失2,900万ドル(≒33億円)

  • 2021年 第一四半期分しかありませんが、売上4,400万ドル(≒49億円)に対して、粗利益1,000万ドル(≒11億円、粗利益率23%)、営業損失1,000万ドル(≒11億円)。2021年4月時点で、顧客43,000社、製造個数600万個以上との取引実績があるようです。

「Xometry」でできる加工・サービス

「Xometry」でできる加工・サービスですが、切削加工、3Dプリンタ、レーザーカット、ウォータージェット、板金加工、射出成形、ウレタン加工、材料販売になります。かなり広範囲の加工ができるマーケットプレイスになります。

部品加工の受発注プラットフォーマーがアメリカで成り立ち日本で成り立たないのか

※後日、アップ予定

日本に進出してきた場合「Xometry」は浸透するのか

※後日、アップ予定

「Xometry」から学ぶべきこと

※後日、アップ予定