製造業経営コンサルタントの井上です。

私のクライアントは中小中堅の受託製造・加工業が多く、主の大手メーカーの下請の企業が多くを占めています。中小中継の製造業のコンサルティングにおいて、クライアントの顧客の状況やその業界動向や技術動向を知らなくてはいけません。当然ですが、顧客が上場企業なら有価証券報告書に目を通してある程度把握しておく必要があります。

四半期ごとに発表されてますが、事業環境などが更新された都度、変化点や質疑応答に含まれる事業環境や動向、気になる点をまとめていきます。

特に、

  • 事業環境及び環境の変化
  • 事業戦略の方向性
  • 製造拠点の動向(日本での今後の生産をどう考えているのか?)

この3点について見ていきます。

今回は、半導体製造装置・精密測定装置メーカーの(株)東京精密になります。

半導体製造装置 市況データ

まずは半導体製造装置関係の市況データを見ていきましょう。半導体製造装置販売予測と鉱工業生産指数、貿易統計の輸出(一般機械)を見ても、高い水準になっています。

製造業の未来 半導体製造装置
((社)日本半導体製造装置協会より)

東京精密の業績推移

まずは業績推移ですが、第三四半期では前年同期比受注高+94%、売上高+40%となっています。

2021年度の業績予想としては、連結では売上高は前年比+32%、経常利益は+67%となる予想となってます。

半導体製造装置セグメント ー 東京精密

決算短信 比較

※前四半期との気になる点・変化点については赤文字

2022年3月期 第二四半期 【半導体製造装置】

半導体製造装置部門では、5Gの普及に関連したサーバ・通信関連ロジックデバイス、EVの開発加速や普及 に伴う車載デバイス・パワー半導体、並びにこれらに関連した電子部品向けの製造装置需要が堅調に推移したこ と、半導体デバイスの国産化を推進する中国からの需要も高水準を維持したこと等により当第2四半期連結累計 期間の受注高は既往ピークを更新しました。 こうした状況を受け、生産、出荷も高水準な状況が続きました。 当第2四半期連結累計期間の当セグメントの業績は、売上高 47,693 百万円(前年同四半期比 42.8%増)、セグ メント利益(営業利益) 11,296 百万円(同 98.8%増)という結果になりました。

2022年3月期 第三四半期 【半導体製造装置】

半導体製造装置部門では、サーバ・通信関連ロジックデバイス、メモリ半導体、パワー 半導体、ディスプレイドライバ IC 向けおよびウェーハ増産向けなどを中心に製造装置需要 が堅調に推移したこと、半導体デバイス国産化を推進する中国からの需要も引き続き高水 準を維持したこと等により当第 3 四半期連結累計期間の受注高は既往ピークを更新しまし た。 こうした状況を受け、生産、出荷も高水準な状況が続きました。 当部門における当第 3 四半期連結累計期間の受注高は 1,191 億 15 百万円(前年同期比 107.1%増)、売上高 724 億円(前年同期比 49.2%増)、営業利益は 166 億 29 百万円(前 年同期比 102.6 %増)となりました。

第 3 四半期 決算説明会質疑応答

1. 3Q SPE 製品別売上高、受注高情報を頂きたい。
売上高:検査装置(プローバ) 6 割、加工装置(ダイサ、研削装置) 4 割。

受注高:検査装置 6 割半ば、加工装置が 3 割半ば。

2. 3Q SPE 受注高が当社想定比 上振れた背景を聞きたい。
DDIC ならびにメモリ向けのプローバ受注、またパワーデバイスやウェーハ製造用の研削装置受注が想定を上振れたことによる。
 
3. 3Q SPE 受注高の前四半期比増減が、同業他社傾向と異なる理由に心当たりはあるか。
当社の SPE 製品構成によるもの(プローバの受注増加やウェーハ製造用研削装置受注が、他社と異なる動向につながっている) と考える。
 
4. 3Q の計測受注高が当社想定比 上振れた背景、対象製品、利益性、継続性はどうか。
主因は SPE やロボットなど、機械業界向けの市場開拓が、このタイミングで結実したことによる。特に SPE 向け等に大型の製品の受注を複数件得ている。確固たるものではないが、4Qはいったん減少も、来年度にむけ再度増加する方向とみる。
9. 現在の部材調達状況と、コストアップへの対策などを聞きたい。
足許では、何とか調達を続けている状況。 サプライヤに対して、長期のフォーキャストを提供し、長納期部品を早期に発注・ 確保する対応をとっている。 またコスト増にはなるが、複数社調達や、設計変更対応も並行して実施している。
考察

半導体製造装置業界は、全世界的に活況なので東京精密も例外でなく、受注残を見てもかなりの量を確保しています。
この流れは今後も数年続くと言われています。
質疑応答からは、サプライヤに対して、長期のフォーキャストを提供し、長納期部品を早期に発注・ 確保する対応をとっているとあり、実際に大手装置メーカーの動きと一致します。
中小製造業においては、忙しい状況がつづきそうです。

測定機器セグメント – 東京精密

設備投資状況

まとめ

まとめ
総じて、IR資料から本質的な部分を垣間見れる部分がやや少ないので【参考レベルC】とさせていただきます。

IRから漏れ伝わるシリーズ

IRから漏れ伝わる事業環境分析|半導体製造装置メーカー:レーザーテック(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|EUV向け半導体マスクブランクス:HOYA(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|工作機械メーカー:DMG森精機(株)
IRから漏れ伝わる事業環境分析|産業用ロボットメーカー:(株)安川電機
IRから漏れ伝わる事業環境分析【開示レベルC】|ファナック(株):産業用ロボット・工作機械・放電加工機・射出成形機メーカー
IRから漏れ伝わる事業環境分析【参考レベルC】|(株)ヒラノテクシード:塗工機・化工機メーカー(ロールtoロール)

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 注目企業の事業分析
業界企業名事業内容第1四半期第2四半期第3四半期期末
 半導体製造装置

 レーザーテック(株)半導体マスク欠陥検査装置等製造9月12月3月6月
 ローツェ(株)ウエハ搬送システム、FPD製造装置等5月8月11月2月
 工作機械・産業用ロボット ファナック(株) CNC装置、工作機械、産業用ロボット製造 6月 9月 12月3月