装置関連の経営コンサルタントの井上です。

ーロールtoロール装置(塗工機・加工機)の生産・受注高・受注残から見る市場動向・産業動向(2020年11月)ー

ロールtoロール装置メーカーの代表格で上場企業のヒラノテクシードとテクノスマートの四半期決算が出たので、2020年11月と題して、受注状況を見ていきます。

再度、確認でまた書きますが、私のブログを見て頂いている方はわかると思いますが、製造業の現状把握(生産動向など)を鉱工業生産指数や各種受注高の経済指標から把握して、現場のクライアントと対策を考えたりしています。装置関連の動向が景気動向のかなり早めに変化を見える指標です。

その中で、今後の装置業で日本で生き残る分野は再三申し上げてますが、

   化学 + 装置

の分野が考えられます。一番代表的なものは半導体製造装置です。その次に、原材料を作るプラント。その後のフィルムなど素材となる製造装置。ここでよく用いられている装置、ロールtoロール装置があります。ただこのロールtoロール装置は、半導体製造装置や工作機械のように特定のものを作る為の表現になっていません。半導体製造装置だと半導体を作る為の装置です。

ロールtoロール装置はいわゆる装置の機構・方式になります。ロールtoロール装置で行われるプロセスは、塗工や化工、プレスなど様々です。ロールtoロール装置で複数のプロセスを持って生産していくことが多いと思います。

ロールtoロール装置の動向が鉱工業生産指数などから読み取れないので、代表的なメーカーで上場している会社の受注高や受注残から動向を見ることにしました。

これから見ていきたいメーカーは、(株)ヒラノテクシード(株)テクノスマートになります。他の大手装置メーカーとしては、東レエンジニアリング(株)(株)ムサシノキカイなどがありますが、上場はされてないので情報がわかりません。

上記2社に関しては、決算情報からの戦略事業分析を随時行っていきたいと考えてます。今回の2020年11月分として、受注高/受注残をまずまとめたのでお伝えします。

(グラフ1)
(グラフ2)

今回の受注額、受注残を見ていただくと、ヒラノテクシードが2ヶ月連続で受注残が増え、テクノスマートも受注残が再び増え始めました。

リチウムイオン電池の需要も旺盛であり、また電子部品の需要も旺盛で塗工機(コーター)の需要は更に高まっていくと予想できます。

上記2社がロールtoロール装置(塗工機・化工機)でどのような製品を製造するメーカーに装置を納めているということですが、(株)ヒラノテクシードのHPより、

装置名用途例
光学機能性フィルム塗工ラインハードコート、AG、AR、偏光板、透明導電膜
フレキシブル基板塗工ラインフレキシブル回路基板(FPC、FCCL)
ドライフィルム塗工ラインドライフィルム
各種電子部材塗工ライン電磁波防止フィルム、異方導電性フィルム、放熱シート、ウェア固定用テープ
電池電極塗工ラインリチウムイオン電池(LiB)電極、燃料電池電極、キャパシタ、セパレータ
離型フィルム塗工ラインシリコンフィルム
離型紙塗工ラインシリコン紙
不織布乾燥機不織布関係製品
セラミックシート成形ライン(超薄膜から薄膜)MLCC
セラミックシート成形ライン(薄膜から中厚膜)MLCC、インダクタ、サーミスタ、バリスタ
セラミックシート成形ライン(中厚膜から厚膜)ピエゾ、アルミナ基板、静電チャック
フィルム延伸ライン光学フィルム
炭素繊維プリプレグ用ライン(ロールプレス式)カーボンプリプレグ(熱硬化性)
炭素繊維プリプレグ用ライン(熱板プレス式)カーボンプリプレグ(熱可塑性)
合成皮革ライン合成皮革
ホットメルトコーターラインカーボンプリプレグ
ガラスクロス製造ライン(キャラメライジング機)リジッド回路基板(CCL)、ガラスエポキシ基板、ガラス繊維・織物
ガラスクロス製造ライン(シラン処理機)リジッド回路基板(CCL)、ガラスエポキシ基板、ガラス繊維・織物
マルチコーター研究開発、パイロット、テスト機
その他塗工ライン経皮吸着用医薬品テープ、床材、可食フィルム、バリアフィルム、各種フィルター、逆浸透膜、研磨テープ、農業用フィルム、抗菌フィルム、加飾フィルム、磁気記録媒体、感熱フィルム、インクリボン、光触媒フィルム、耐熱フィルム、壁紙

上記のように電子部品の材料や新素材など成長産業に向けての材料等を作る装置といえます。リチウム電池にも関係してきます。

グラフ1,グラフ2ともに同様に傾向を示しているので、納入先の業界は類似していると推測できます。ヒラノテクシードの売上高の方が、テクノスマートの約1.5〜2倍程度ありリーディングカンパニーです。受注状況から見るとここ1年ほどは受注状況が下降トレンドに有りましたが、直近の6月の四半期決算から見ると上昇に転じつつあります。この業界は装置単価が高いです。(聞くところによる数千万〜数億になります)この用の装置は注残が通常6ヶ月〜1年程度もつことが多いです。ここ数年は2年分くらい注残を持っていたと言えます。

今後は、ロールtoロール装置の受注動向も見ていき、産業動向の先を垣間見えるようにして行きます。

最新の経済指標をグラフ化して見ることによって、経済トレンドを把握することが重要。工作機械受注高、鉱工業生産指数、製造業国賠担当者指数(中国)(EU)、設備稼働率(米国)等を押さえておきましょう。

経済指標名
  産業機械 受注統計
 工作機械受注高 鍛圧機械受注
 機械受注統計      ※1 内務省HPへ
 機械受注高 (産業用ロボット) 機械受注高 (建設機械)
 製造業購買担当者指数
 製造業購買担当者景気指数(日本) 製造業購買担当者指数【PMI】(ドイツ)
 製造業購買担当者指数【PMI】(中国) 製造業購買担当者指数【PMI】(ユーロ圏)
 製造業景況指数【ISM】(アメリカ) 
 鉱工業指数
 鉱工業指数(生産)四輪自動車・自動車部品 鉱工業指数(生産)電子デバイス・電子部品
 鉱工業指数(生産)生産用機械工業 鉱工業指数(生産)電気計器・計測器
 鉱工業指数(生産)半導体・液晶製造装置・半導体部品・液晶パネル 鉱工業指数(生産)計測分析機器・精密測定機
 鉱工業指数(生産)工作機械 鉱工業指数(生産)金属製品工業
 鉱工業指数(生産)機械プレス 鉱工業指数(生産)炭素繊維
 鉱工業指数(生産)産業用ロボット 鉱工業指数(生産)水晶振動子
 鉱工業指数(生産)航空機部品 鉱工業指数(生産)段ボール箱・板
 鉱工業指数(生産)建設機械 鉱工業指数(生産)プラスチック製部品
 鉱工業指数(生産)食品・包装機械 鉱工業指数(生産)ファインセラミックス
 鉱工業指数(生産)ポンプ・圧縮機・油空圧機器等 鉱工業指数/設備稼働率(アメリカ)
 鉱工業指数(生産)普通鋼・特殊鋼等 
 生産統計
 建設機械生産統計(金額・台数)
 貿易統計
 貿易統計 商品別輸出額(全体) 貿易統計 商品別輸出額(電気機器)
 貿易統計 商品別輸出額(一般機械) 貿易統計 商品別輸出額(輸送用機器)
 特定サービス産業動態統計調査
 機械設計業エンジニアリング業
 その他
 ハイテクノロジー産業の国別付加価値額
 貿易収支
 景気動向指数