製造業経営コンサルタントの井上です。

日本にはまだ、日本の製造業が凄いという幻想を頂いている人が多い。確かに、まだ凄い”部分”もあるということは事実。

他国、特に中国の進化のスピードは凄まじいものがある。

中国のGDPの成長が凄い!

各国のGDPの推移

米中とのGDPの差

製造業の研究開発費の推移

製造業 研究開発費

製造業 研究開発費2

各国の製造業研究開発費の順位と推移を見てみると、圧倒的に中国とアメリカが突出してます。日本もその次に付けています。上記の2016年の対中国との差を倍率で表しました。

製造業の研究開発費2

日本においては、対中国で2.7倍、ドイツでも4.38倍となってます。

この差は年々広がっています。中国の最新データが2016年だったので、今回は2016年までしか示せなかったのですが、それからすでに2年以上立っています。もっともっと差がついて、縮まることは当面ないと考えられます。

これらを背景に中国のイノベーションが進んでいき「チャイノベーション」と呼ばれる様になってきてます。

中国のチャイノベーションの現状

11月1日の日経ビジネスで「中国が世界を染める チャイナベーション」 の記事で「日本の得意分野に迫る 中国新興企業の実力部品、素材、ロボットにも」で中国の製造業で起こっているイノベーションの紹介があります。

日本の得意分野に迫る 中国新興企業の実力チャイナベーション

(日経ビジネスより)

紹介されているのが

  • 3Dプリンターメーカーの摩方材料科技(BMF)
  • カーボンナノチューブの湾科技(シーワン・テクノロジー)
  • パワー半導体分野の青銅剣科技グループ
  • 産業用ロボットハンドの軟体機器人科技(SRT)

これからの企業が紹介されています。簡単に説明。ほとんどが日本が得意とする分野です。

3Dプリンターメーカーの摩方材料科技(BMF)

3Dプリンターメーカーの摩方材料科技(BMF)

BMFの売りは「世界唯一」と宣言する、その精度にある。
 同社の3Dプリンターは紫外線を照射して液体樹脂を固めていく「光造形型」と呼ばれるタイプの製品だ。同社製品は2マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの積層間隔で複雑な超小型部品を製造できる。一般的な光造形3Dプリンターの積層間隔は50マイクロメートル程度だから、文字通り桁違いの能力だ。

日経ビジネスより)

カーボンナノチューブの湾科技(シーワン・テクノロジー)

カーボンナノチューブの湾科技(シーワン・テクノロジー)

シーワン・テクノロジーの創業者で董事長の鄧飛氏は「従来の製造方法では太さや長さがそろわず、品質が安定しなかった。当社はそれを克服する技術を開発した」と流ちょうな日本語で説明する。

日経ビジネスより)

パワー半導体分野の青銅剣科技グループ

パワー半導体分野の青銅剣科技グループ

青銅剣はこれまで「IGBT」という種類のパワー半導体の制御ドライバーを開発してきた。駆動ICチップの独自開発などの技術を磨き、インフィニオンや富士電機、三菱電機などと提携。IGBTの制御ドライバーでは中国市場の3割のシェアを握り、顧客は300社超に上るという。

日経ビジネスより)

産業用ロボットハンドの軟体機器人科技(SRT)

産業用ロボットハンドの軟体機器人科技(SRT)

薄いガラスや食品など傷のつきやすい素材を扱うのが難しいという点だ。例えば、自動車のライトのような複雑な形状の部品がゴロンと置かれた状態を想像してみてほしい。置かれた向きや傾きによって持つ場所が変わる。また、傷つきやすく軟らかい品物を扱うには微妙な力加減のコントロールが必要になる。
 軟体機器人科技(SRT)はこうしたものをつかむ「手」を開発している。高少龍CEOは「これまで自動化ができず、人の手作業に頼っていた生産工程を自動化できる」と話す。

日経ビジネスより)

詳細はぜひ日経ビジネスで見てもらいたいですが、特に「産業用ロボットハンドの軟体機器人科技(SRT)」は日本の企業にも取り組んでもらい、世界No.1をとって貰いたい分野です。

産業用ロボットは結局、掴めないとロボットを使用できません。したがって、ロボットハンドがまずは課題になります。それを設計製作して専用で使用できるようにします。確実にロボットを稼働させることが重要なので、専用で確実に掴むことが考えるために、専用設計になりがちです。

今回紹介されている企業だけでなく、多くの分野で創意工夫を凝らし多くのメーカーが中国からイノベーションを起こそうと躍起になっていることでしょう。

まとめ

ビジネスは世の中の困りごとを解決する為の手段であり、その対価として収益を得ることができる。金儲けが先でも、世の中を良くする為が先でも、多くの人が生きていくためにビジネスを営む必要があるが、このビジネスに対する意欲、貪欲さが中国と日本で圧倒的に差がある。また製造業の研究開発費も年々差が広がってきており、今後も中国優位が続く。