製造業経営コンサルタントの井上です。

クライアントの社長が、社員がやるべき事を実行するようになってきたことに大変喜んでいるのを見て、喜んでいる井上です。

今日は、社員(ビジネスパーソン)が働く上で持っている自分の「軸」何に重きをおき仕事をしている。また、その「軸」が会社にどのように作用して、組織としてある方向に動き出しベクトルについても話していきたいともいます。

ビジネスパーソンの3つの「軸」

まずは、ビジネスパーソンが仕事をする上でどのような軸を持っているか考えてみます。よくクライアントには言っている話ですが、3つの「軸」があります。それは、

      • 顧客軸      ⇒     未来志向
      • 会社(組織)軸  ⇒       過去志向
      • 自分軸      ⇒   過去志向

顧客軸は、新しい価値を作ろうとする思考、すなわち顧客思考です。利益は顧客の問題を解決して、対価としていただけるものです。したがって、優先されるべき考え方です。

次の会社(組織)軸は、何が何でもルール優先という考え方。また会社のヒエラルキー絶対であり、イエスマン。上司の言うことは、意見も言わず絶対に従う。ルール、上司の指示が仮に時代に合わず合っていなくてもです。

最後の自分軸は、自分にとって楽かとか、利益があるなど、自己中心的な考え方のこと。

そもそも会社の目的を考えると、当然、利益をあげること。これが無ければどれだけ素晴らしい理念があっても存続できません。利益を上げることは、顧客の困りごとを解決した対価であり、解決する為の自社の商品でありソリューションがあります。

この3つの軸は、会社で醸成される

上記の3つの軸は、それまでの生活や親からの影響、社会生活の中で醸成されます。会社に関して言えば、企業内でのルールや文化などがあります。そのルール、文化によって社員の「軸」は変化していきます。企業規模や業種、職種によって変わってきます。

主に製造業を見てきている私は、大企業の多くは「会社(組織)軸」をメインに動いていきます。これは当たり前で、ルールがないと動けない規模になっているからです。ただ、組織の上位階層が、どの「軸」を持つかよって企業の成長性や競争力が決まってきます。

良い例では、アップルのスティーブジョブスなど典型です。ユーザー視点で現在でなく、未来を見据えていました。悪い例では、日本企業に多いのですが、東芝やJALなど「組織軸」をメインに活動が動いていたため、市場目線、顧客目線を失い、自分たちでは取り返しにつかない状態になったと考えられます。現在進行形では、JDIがそうですね。

大企業を変革を起こす、顧客視点、未来視点に立たせるための仕組みができれば、その後、全体的な「軸」が「顧客軸」に移すことが可能です。

中小企業(100〜150名以下)の場合は、ほぼ全ては経営者の性格と能力で決まります。経営者が常に、真の「顧客軸」を持って、それを社員に求めて実行させることができる能力があれば、「顧客軸」を持った社員が増え「未来志向」になり、チャレンジが行われ成長するチャンスを掴むことができます。

経営者の「軸」を、社員の行動に反映させて「顧客軸」を持たせ「未来志向」を持つ社員に育てていくことは非常に難しいです。

なぜなら、経営者は実務的に忙しく頼りになる幹部も少なく、実務を回すんことで精一杯で、このようなことまで気ま回らないのが現実です。

会社内での「会社(組織)軸」と「自分軸」が広がると組織としては内向きな力が働く

この「軸」のあり方によって企業文化や企業内の常識が醸成されていきます。

ここで怖いのは、「会社(組織)軸」や「自分軸」が広がると、当たり前ですが「顧客第一」では無くなります。その結果、顧客の為に重要な商品やソリューションの開発も単に”めんどくさいこと”に変わり、変革が起こらず顧客が離れていき、業績が落ちていくという自然の法則(?)に従って衰退してきます。

多くの中小企業は上記の状態に陥っているところが多いです。

今までは情報が行き渡ってないので、そのような企業でも社員がそれほどやめず、事業を継続できました。しかし現在は、既に労働の流動性が増してきてます。今後は、びっくりするくらい流動性が高まり社員が辞めることが止まらない企業がでるでしょう。

社員の「軸」のあり方が集合体としての組織で、内向きのベクトルに向かうとそれを変更するのに数年かかります。メーカーの場合は、業績に影響を与える重要要素の自社製品があるので、まだよいのですが、受託製造業の場合は自分たちで企画して仕様を決めた商品を持ってません。常に申し上げてますが、受託製造業の商品は”日々の生産活動(QCD)”です。それを行うのは、機械または社員である人です。多品種小ロットが多いので、人で作業をする要素が増えます。中小の受託製造業が、先程の申し上げたベクトルの方向が内向きになると、生活残業が増え、現状のQCDの見える化が退化し、改善活動も停滞してしまいます。

会社の社員のベクトルの方向をどう良い方に向わせるか

中小製造業のベクトルの向きは内向きになると、経営者が指示したことが、実行されずに経営者がより実務を統括、執行者になっていきます。そうなると管理出来ずに社員はより他人依存になります。社長がやってくれるだろうと考えてより「自分軸」を中心に回り始めます。

ベクトルがより内側に「自分軸」側に向いていきます。

これを改善するのには、多くの場合、後継者がいれば後継者がそれを担い改善が進む見みます。ただ、後継者がいない場合はコンサルなど外部の人間が入らないと、そのまま悪い状態で進みます。

いずれにしても「役割」と状態の「見える化」が重要なポイントになります。更に、どの状態が「良い」のか「悪い」のかを明確にしていかないと、誰も判断出来ずにまた経営者依存になります。ベンチャーみたいに他人の潤沢な資本が有る場合は、ワクワク系の管理でもそれなりに進むでしょう。「良い」「悪い」を各個人で判断できれば、そのまま成長する会社になっているはずです。そうなっていない時は、「役割」「状態」の見える化を進めないと、前には進めません。

まとめ

軸には「顧客軸」「会社(組織)軸」「自分軸」があり、「顧客軸」は未来志向で外向き。それ以外は過去志向で内向きになります。会社として、内向き志向が強化されると、社員が内向きにしかベクトルが向かなくなり、進化が止まります。
それを改善するには「役割」「状態」の見える化を常に進めないと、何もしなくなると自然に内向きへのベクトルに向いてきます。それが人間というものです。