船井総研の別会社の船井(上海)商務信息咨询有限公司より、毎月中国のコンサルティングレポートが届く。

今回は、「中国での日本の熟練技術者」についてでしたので、紹介します。

かなり前から、日本の技術者が中国に高待遇で再就職というのがまだ続いているようです。

このことにより、日本の技術の海外流出が起こり、結果、日本の製造業を苦しめる一因になっています。

ただ最近は、「日本の製造業を元気に」というが、一昔の「商店街活性化」に似ている気がしてきました。

 

メイドインジャパンが活かせる技術分野

船井(上海)商務信息咨询有限公司

菅野幸介

ここ数年、エンジニアリングの市場では日本と中国では全く逆の現象が起こっています。

日本では「熟練技術者」と呼ばれる、40代後半前後以上の方の活躍機会が減ってきているのに対し、中国ではまさに今、これらの技術保有者の需要が高まってきています。

中国市場では、「足りない技術は外部から補う」という昔からの風潮があり、長年を要する自社開発よりも、必要な技術や人材を外部からスカウトし、スピード重視にてマーケット需要を満たすことを優先する傾向にあります。

自社での独創的技術の開発および育成を重視する日本企業から見ると、この中国の姿勢は「なりふり構わぬ、ポリシーも無い会社方針」と映る事が多いようですが、劇的なスピードで変革を続ける中国市場では、もはや「変化への迅速な対応」こそが自社生存のための最重要命題である、という事は常識となっています。

多くの中国企業から最近問い合わせを受けるのが、「日本人のこういった指導者クラスの技術者を迎えるにあたって、彼らはどのような待遇を望んでいるか」という質問です。すべての中国企業がそうであるとは限りませんが、多くの中国企業は「必要なものを導入する」ことにあたり、できる限りの双方満足の行く条件で来てもらうために、日本人熟練技術者を中国に呼ぶ際にどのような点を不安に思い、どのような要求があるのかを事前に丁寧にリサーチしているようです。

ある上海近辺の中国系エレベータ会社では、日本の熟練技術者を迎えるにあたり、

・外国人用のセキュリティの高いアパートの確保

・専用の通訳スタッフを常駐

・出勤退勤時は専用車にて安全に送迎

・年数回の日本への帰国費用の負担

等、日本人が海外で暮らす為の不安を最大限解消する為の準備をされていました。

また、給与面や待遇面で好条件なだけではなく、業務面でも「中国人エンジニアが私から真剣に学び、より良い製品を作りたいと知識を吸収する素直な姿を見て、自分のやりがいを感じている」といった、技術者としての喜びを再び取り戻すというメリットもあるようです。

日本では産業の衰退とともに引退を迎えてしまうような熟練技術者の方でも、中国をはじめとする海外ではまだまだ現役で必要とされるケースは今後もしばらく存在しそうです。