製造業経営コンサルタントの井上です。
最近、労働市場の流動化(景気が良かったのもあるが)が進み、会社と社員のパワーバランスが変わってきている。その結果、退職に繋がりやすく、会社としていい意味で社員を鍛えづらい環境になってきた。
トヨタでも「変われない社員」の存在で悩む
今日のWEB版の日経ビジネスのシリーズ企画「目覚めるニッポン」で、トヨタの労使交渉の記事が載っていた。
トヨタ自動車は10月9日、秋季労使交渉を開催した。「春季」の労使交渉で決着が付かず、延長戦を実施するという異例の事態だ。結果は、労働組合側が要求したボーナス(一時金)は満額回答となったが、その背景にはトヨタの大きな危機感がある。これまでトヨタは、年功序列や終身雇用といった「日本型雇用」の象徴的存在と見られていたが、その同社ですら今、雇用の在り方を大きく見直そうとしている。
(日経ビジネスより)
簡単に説明すると
●10月9日、トヨタ自動車で「秋季」労使交渉が開かれた
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●労使交渉を導入以来、初めての延長戦に突入
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<異常事態>
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●3月6日に開かれた第3回の労使協議会は、緊迫感のなさに対して、豊田章男社長が一喝。
「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」。
●社長や副社長が実際に現場をアポイントなしで訪れ、現場の実態を確認。
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そのうえで、トヨタの原点である「カイゼン」や「創意くふう」に改めて取り組んだ。5月には60%だった社員の参加率は9月には90%まで上昇したという。「全員が変われるという期待が持てた。労使で100年に1度の大変革期を必ず越えられる点を確認し、回答は満額とした」(河合副社長)
●最終的には、満額回答
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●河合満副社長が、
「労使が『共通の基盤』に立てていなかった。春のみの回答というのは異例だったが、労使が共通の基盤に立つための苦渋の決断だった。今回の(労使での)やり取りの中で、労使それぞれが変わりつつあるのかを丁寧に確認した」
●トヨタが頭を悩ませているのは、「変わろうとしない」社員の存在だった。
●前代未聞の労使交渉延長戦から見えてきたのは、変われない社員に対する警告ともいえる人事制度の再点検だった。
以上の様に、日本の最先端企業のトヨタ自動車でさえ「変われない社員」に対して、手を焼いているという状況である。
「年齢」と「現状認識」から分類する社員の行動
多くの労働者では、私が勝手に「年齢」と「世の中の流れ等の現状認識」によって行動する人、しない人をマトリクスで分類してみました。
(図1 筆者作成)
トヨタの社員で「変われない人」とは、②または④を言っているのでしょう。多くは④を指しているのかもしれません。(皆さん優秀なので。)
中小企業の場合は、④の幹部と多くの②と①の組織で③の人がいるが、少数はなので「マイノリティ」になりがちで、その結果、その組織から出ていくことがある。
以前は、③の人が変革をなんとかしてやり遂げる場合もあったが、最近は労働市場が流動化しているので、外部流出してしまい、社内変革が起こりにくい状態になります。
また本質的には世代間での認識の違いが大きいと考えます。これはあまりにも時代の変化スピードが速いという側面はある。
それを説明する為の図が、以前のブログになるのでそれで説明します、
(図2 筆者作成)
時代の流れが速いと「情報収集」「情報処理」「情報伝達」の手法がそれぞれの世代によって、違っています。これもテクノロジーの進化スピードが速いことが起因しています。昔は、数世代に渡って同じようなやり方で過ごしてきたので、世代間ギャップは生じていなかったのでしょう。
「世代間キャップ」は、言ってみれば「現代病」的なものといえる。
「世代間ギャップ」を埋める努力は必要ですが、相当、労力とやり方をしないとうまくいきません。私がコンサルティングに入る場合は、この部分を意識して会社を見るようにしています。理由は、図1の③の人が幹部であれば、正しいことを決めれば後は実行だけでうまくいきます。ただ、現実はそうはなりません。多くは①②④の組み合わせの組織で、③のメンバーを探す作業から始まります。
「世代間ギャップ」を無くすには、結構、労力がかかります。
会社はさまざまな人間のギャップを埋める努力をする必要があります。
「世代間」「能力」「現状認識」
社員も認識や行動を変える必要があるが、会社自身もより社員と認識を合わせる努力をする必要がある。
この「ギャップ」がいろいろな弊害をお越し、引いていは社員の退職なども起こります。また採用すればという考え方は、良くないし古いし、ビジネスを行っている会社として経済合理性にもあっていません。
会社と社員の「認識」をあわせる為に、会社に神経を通すことを意識して日々の活動を行ってください。
このコトについて過去に書いてますので、ぜひお読みください。