新関西国際空港は、「国家戦略特区」に関西国際空港を活用した国の経済成長のプロジェクト案を内閣官房地域活性化統合事務局に提出したと発表した。「関西国際空港スマート愛ランド構想『水素グリッドプロジェクト』」と「関西国際空港グローバル・サプライチェーンプロジェクト」の2つである。

その中にある「水素グリッドプロジェクト」というのがある。

「水素グリッド」

水素を社会インフラとして、使用していくこと。

燃料電池車(FCV)が水素を使用して、水しか出さないエコカーとして注目されている。豊田自動車が発売を発表して、補助金が200~300万円付くという流れになっている。確かに、水素さえあればクリーンでエコである。水素さえあれば。当然、液体水素があればですが。(液体水素は絶対零度まで冷やさないと液化しない)

水素(液体水素)を作りこと自体にコストとエネルギーが必要(二酸化炭素が出る)。それに加え、水素という気体の危険性もある。このことを大前研一氏のまとめている。この記事の要約が以下の通りです。やはりマスメディアが発しているメッセージは、一度疑いつつ検証していくことが必要です。

私も大前氏と同意見で、反対ではない。むしろ推進派であるが、少し「時期尚早」であると感じている。

 

教えて大前先生 > 大前研一の日本のカラクリ

成長戦略の中核「水素ステーション」は危険すぎる

 

●水素はクリーンエネルギーという大きな勘違い

水素は単体では自然界に存在しないから、人為的に作り出すしかない。生成過程で大量のCO2が発生する。

○水素の作り方は主に3つしかない。

1つは、水の電気分解だ。
原発が稼働していたときは、安価な夜間電力を利用して電力コストはキロワットアワー当たり8円程度。ガソリン車に十分対抗できるレベル。火力で発電した電力の売値はキロワットアワー、15~20円。
10円以下の電力で電気分解した水素でなければ、ガソリン車には対抗できないしCO2をガンガン排出する火力発電由来の水素では、全く環境に優しくない。

2つ目の方法は、メタン(CH4)と水(H2O)を高温・高圧で反応させること
この方法も大量のCO2が発生する。水素の輸入には技術的な問題もある。水素はLNG(液化天然ガス)と同じように、“液化”しなければ運搬できない。LNGはマイナス160度で液化するが、水素は絶対零度に近いマイナス253度にならないと液化しないために、技術的にも非常に難しい。

近年になって千代田化工建設が有機溶剤のトルエンと水素を反応させて、メチルシクロヘキサンという化学物質に液化し、常温常圧で水素の貯蔵・輸送を可能にする技術(SPERA水素)を開発して注目を集めている。

3つ目の方法は、高温の水に反応した金属は酸化して水素を発生する。これが水素を作る3番目の方法。

福島第一原発では、その水素が建屋内に溜まり、空気中の酸素と混じって、水素爆発を起こした。水素は酸素と混ざって爆発する。水素だけなら火種があっても爆発しない。
●水素を社会インフラにするのはまだ時期尚早だ

水素は取り扱いが難しいだけではなく、実際大変恐ろしい気体なのだ。

爆発の威力は混合比にもよるがガソリンやLNGに勝るとも劣らない。無味無臭で目に見えない水素は、簡単には検知できないうえに爆発が起きたときには、とんでもない規模の被害が出る恐れがある。

水素エネルギーを分散型の燃料として利用するのは反対。
水素そのものを分散して、車のような移動体に搭載するのは危険が多すぎるのだ。

水素を社会インフラにするのに反対しているわけではない。時期尚早、と言っているのだ。